スムーズな相続のために⑥ 「自分は損してる」誰もがそう思う。

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こんにちは。司法書士の片岡和子です。

先日の暖かさで、ベランダガーデンは彩が増えてきました。

でも、今日の東京は寒いですね~。

春はまだまだです。

 

このところ、相続について、いろいろと書いてきました。

借金があるかも?と思った場合のこと、まずは遺言の有無・内容を確認すべきであること、

相続人の特定のお話、自筆証書遺言の取り扱い、など。

詳しくは以下の記事たちをどうぞ。

スムーズな相続のために・・・借金があるかも?と思ったら

スムーズな相続のために・・・まずは故人の意思(遺言)の確認を。

スムーズな相続のために・・・相続人確定の作業は意外なほど大変。

スムーズな相続のために・・・養子縁組や認知について理解しておく。

スムーズな相続のために・・・自筆の遺言を預かっている場合の対応

 

借金がないことがわかって、相続人が確定して、遺言も見つからなかった・・・ということになると、

「じゃあ、遺産をどうやって分ける?」

という話になります。

相続の相談を受けていると、

「自分は他の相続人よりも多めに貰ってもいいんじゃないか」

と感じている人が多いなあ、と思います。

根拠は人それぞれで、

「主に介護をしたのは自分なのだから・・・」

ということであったり、

「兄は家を建てる時にお金を出してもらっているのだから・・・」

ということであったりします。

この

「自分には多めにもらえる権利があるのでは?」

という漠然とした感覚を、ハッキリとした形にしていくことは簡単です。

そう、「ネットで検索」です。

あれこれと調べているうちに、「寄与分」だとか「特別受益」といった法律用語にたどり着きます。

「自分の感覚は間違っていなかった。自分には法律上の権利がある!」

という確信が生まれる瞬間です。

「自分には権利がある!」を根拠づける情報を集めるのも簡単です。

ネット上では、いくらでも見つけられます。

単なる「意見」だけではありません。

「判例」なんていう、「法律上の根拠」っぽいものまで見つかります。

実に簡単に、芋づる式に「情報」が手に入ります。

でも、ここには重大な落とし穴があります。

無意識のうちに「自分に有利な情報」だけを集めていることがあるのです。

都合の悪いことは目に入らないのです。

どんなに賢い人にも、この傾向はあると思います。

つい、自分に有利な情報を集めてしまう、

つい、自分に有利な解釈をしてしまう、

誰にでもあることだと思います。

「兄は家を建てる時にお金を出してもらっているのだから・・・」で考えてみましょう。

弟は、

「兄は家を建てる時にお金を出してもらった。

その分を考えに入れて遺産分けをすべき。

法定相続分どおりに分けるのは公平ではない。」

と考えます。

兄は、

「自分は親の面倒を見ることを前提に家を建てた。

実際に同居して最後まで面倒を見た。

介護の苦労は大変なもので、親に出してもらったお金では引き合わない。

自分が遺産を全部もらってもいいぐらいだと思う。

弟は何もしていないのに権利ばかりを主張する。」

と考えているかもしれません。

弟は、

「兄は家を建てる時にお金をもらったけれど、自分は何ももらっていない。

自分は損をしている。

この損は、相続の場面で埋め合わせがなされるべき。」

と感じていることでしょう。

一方の兄は、

「自分は親の介護を全部押し付けられた。

弟は何もしなかった。

自分は貧乏くじを引いた。

この損は、相続で埋め合わせがなされるべき。」

と感じているかもしれません。

よくあることなのです。

こちらが「自分に理がある」のは当然、と思っていても、相手方も「正しいのは自分の方だ」と思っていたりするのです。

どちらも悪気があるのではなく、どちらも本気で

「自分の主張が正しい」

と思っているのです。

相続の場面では「自分は損している」と感じている人が多く、相続に関する紛争の根っこには必ずこの感覚がある、と言ってもよいくらいだと思います。

とても難しい問題で、そう簡単には解決しません。

もしも解決への糸口があるとしたら、

「もしかしたら、兄(弟)も自分と同じように感じているのではないだろうか? しかも本気で。」

ということに気が付くことではないかな、と思います。

 

 

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2018年3月7日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka