【相続・遺産分割】「不熱心」が凶器になる。

こんにちは。司法書士の片岡和子です。

秋ですねえ。

写真はセイタカアワダチソウ。

事務所近くの線路沿い、というか線路の敷地内です。

東急大井町線らしい景色です。

 

さて。

今日は相続のお話なのですが、タイトルがちょっと刺激的ですよね。

でも、決して大げさではないつもり。

どなたかが亡くなったら相続の手続きをしなくちゃなりません。

遺言書があれば関係者のみの関与で手続きができるのですが、なければ大変。

「相続人全員の関与」が基本なのです(例外はありますが)。

相続人の中に協力的でない人がいると、たちまち行き詰まってしまいます。

比較的単純に思えるものでも、です。

いちばん単純なのは、遺産が銀行預金のみ、という場合でしょう。

金融機関によって具体的な手続き方法は様々です。

でも、概ね共通なのは、以下の①、②どちらかが必要になる、という点。

①相続人全員が実印で押印した遺産分割協議書と全員の印鑑証明書

②相続人全員が実印で押印した銀行所定の書類と全員の印鑑証明書

何らかの形で全員の「実印と印鑑証明書」が必要になるのですねえ。

で、全員が気持ちよくハンコを押して印鑑証明書を渡してくれる・・・とは限らない、というワケです。

相続の処理をスタートさせるのは、たいがい「亡くなった方にいちばん近かった人」ですよね。

金融機関へ連絡して必要な書類を受け取る。

一生懸命説明書きを読んで何とか理解して、さて他の相続人へ協力依頼。

ここで往々にして「温度差」が明らかになるのです。

もちろん、取り分について争いになるようなら、もはや「温度差」の問題ではありませんね。

本格的な相続争い勃発、という展開になります。

でも、単純に法定相続分で分配すればよいだけの場合でも「不熱心」な人が現れると行き詰まってしまうのです。

不熱心な人が現れがちなのは、やはり相続人の数が多い場合、疎遠だった人がいる場合、など。

典型的なのは、きょうだいが相続人になる場合。

そのきょうだいも高齢で既に亡くなっていると、その子供である甥っ子や姪っ子が相続人になります。

会ったこともない相手に連絡を取らなくちゃ・・・なんてことも起きてきます。

で、何とか連絡を取ったけれど反応がない・・・なんてことも起きてきます。

不熱心になる理由は様々。

単純に興味がない、とか。

関わりたくない、とか。

中には「実印と印鑑証明書」と聞いただけで拒絶反応を起こす方も。

自分の取り分が「結構な金額」なら動いても、「微妙な金額」だったりすると「面倒くさい」と感じる方もいるでしょう。

それによって生じる不利益は「微妙な金額が自分のフトコロに入らない」というだけですから。

そして、「積極的な不熱心」というのも世の中には存在するようです。

「亡くなった父からさんざん聞かされていた伯父への恨み」みたいな。

伯父の相続手続きに協力しないことが「数十年前に父が受けた仕打ちへの仕返し」になっちゃうのですねえ。

仕返しの相手を間違えてると思うのですけど。

あ、脱線しました。

実のところ、消極的だろうが積極的だろうが、「不熱心」は凶器になってしまうことがあるのです。

銀行預金の相続手続きが進まないとどうなるか・・・

亡くなった方と生計を同一にしていた方(妻など)は、預金の払い戻しができす、生活費に困ってしまう、なんてことにもなりかねません。

(預金の一部を単独で払い戻しを受けられる、という制度もあるのですが、限度が定められています。)

まあ、この場合は「奥さんのためにちゃんと遺言書作成しておけよ!」という話でもあるのですが。

たまたま故人と多少の関わりのあった姪っ子などが、自分の取り分は少額なのに、ボランティア的に音頭を取って奮闘してる、なんて場合は気の毒です。

そのままにしておけなくて、放っておけなくて始めたことなのに。

一部の熱心な相続人からは「どうなってるんだ? 早くしろ!」なんて言われちゃったりして。

こんな場合、前へ進める方法はあります。

あるにはあるのです。

調停だとか審判だとか。

でも、必要な労力は膨大です。

弁護士さんにお願いすればおカネもかかりますし。

そして、その費用は「弁護士さんを頼んだ人」の負担になるのです。

ものすごいエネルギーやおカネが消費されることになるのです。

「不熱心」の結果としてはバランスが悪いですよね。

実に不釣り合いです。

まさに凶器です。

じゃあ、どうすればよいかって?

・・・どうしようもないと思います。

どうしても自分の取り分を早期に確保したければ、自腹で弁護士さんにお願いするのが最善かもしれません。

それほど取り分もなく、面倒ごとに巻き込まれたくないならば、最初から相続放棄をするのがよいかもしれません。

そして。

もしも自分が「相続の連絡を受けた側」になった場合には、どうぞ不熱心にならずに協力してあげてくださいませ・・・。

 

 

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2021年10月12日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka