スムーズな相続のために① 借金があるかも?と思ったら

DSC05284

こんにちは。司法書士の片岡和子です。

写真はプリムラです。

真冬のビタミンカラー、元気が出ます!

 

今日は、相続のお話です。

「相続放棄」という言葉をご存知でしょうか。

「相続を放棄することでしょ。簡単じゃない。」

という声が聞こえてきそうですが、ちょっと注意が必要です。

一般的に使われている「相続放棄」という言葉は、法律用語の「相続放棄」とは意味が異なっているのです。

「親が亡くなったけど、遺産は全部兄貴に譲って、自分は相続放棄したんだ。」

という場合の「相続放棄」は「自分は遺産を受け取らないことにした。」という意味で使われていますよね。

これは、法律用語の「相続放棄」とは異なります。

法律上の「相続放棄」は、家庭裁判所に申述して行います。

「申述する」って、実際にはどうするのかというと、所定の「申述書」に記入して、戸籍などの添付書類と一緒に家庭裁判所へ提出するのです。

これが受理されると、「初めから相続人とならなかったものとみなす」という、強烈な効果が生じます。

「遺産はいらないよ」というレベルではないのです。

「相続人ではなくなってしまう」というレベルなのです。

ですから、「遺産はいらないよ」というだけの話であれば、法律上の「相続放棄」をする必要はありません。

ここを間違えて、「遺産はいらないよ」だけのつもりで法律上の「相続放棄」の申述をしてしまうと、大変なことになってしまいますので、くれぐれもご注意くださいませ。

では、法律上の相続放棄が必要なのはどんな場合かというと、典型的なのは債務超過の場合です。

亡くなった親に借金があって、預金を全部かき集めて、家を売って、それでも借金の方が大きくて、払うことはムリ、なんていう場合です。

こんな場合には、法律上の相続放棄をすれば、「相続人ではなかった」ことになるのですから、一切の責任から逃れることができます。

借金を払わなくて済むのです。

ただし、預金や家を相続する権利も失います。

マイナスもプラスも全てを放棄する、ということなのです。

法律上の相続放棄の効果は強烈ですから、相続放棄をするかどうかは慎重に検討しなければなりません。

「借金があるらしい」という情報をつかんだら、具体的にどれだけの借金があるかを調べます。

同時に、プラスの財産がどれだけあるかも把握する必要があります。

慌てて相続放棄の手続きをしてしまった後に、実は借金の額を上回る預金があると判明しても、もう後の祭り、ということになってしまいますので。

相続放棄の手続きは3か月以内に行わなければなりませんので、かなりのスピードが必要になります。

慣れていない人にとっては大変な作業だと思います。(慣れてる人なんて滅多にいないでしょうけど。)

預金の有無や残高は金融機関で調べる必要があります。

通帳が見つかっていれば、記帳してみればよいのですが、「あの銀行に口座があるはずだけど通帳がない!」なんていう場合には、金融機関へ出向いて照会することになります。

この時、相続放棄を考えている場合には気をつけなければならないことがあります。

あくまでも「照会、調査」に留めること、です。

相続の手続きをして預金の解約をし、そのお金を使ってしまうと「法定単純承認」となってしまいます。

相続を承認したことになるのです。

そうなると、相続放棄はできなくなってしまいます。

解約した預金で亡くなった方の入院費を払うのもダメなのか? とか、解約した預金に全く手をつけずにいればOKなのでは? といった議論はありますが、グレーな領域には踏み込まないのが一番です。

「親が亡くなったんです」と言って金融機関に出向くと、当然のように相続関係の書類を渡されて説明が始まってしまいます。

ついその流れに巻き込まれて手続きをしてしまうと、あとで面倒なことになる可能性があるのです。

「まずは残高の調査だけをしたいのです。」と、はっきりと告げて照会することをお勧めします。

照会だけの場合でも、親子関係を示す戸籍謄本等は必要になりますので準備しておく必要があります。

長くなってきましたので、今日はここまでにしておきましょう。

これからも、相続にまつわるお話を、いろいろと書いていきたいと思ってます。

 

 

☆こちらの記事も読んでみてね☆

★超入門⑩ 法律上の相続放棄と事実上の相続放棄

★超入門⑫ 相続放棄をしたらお墓はどうなる?

★スムーズな相続のために② まずは故人の意思(遺言)の確認を

★スムーズな相続のために③ 相続人確定の作業は意外なほど大変。

★スムーズな相続のために④ 養子縁組や認知について理解しておく。

 

 

2018年1月6日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka