こんにちは。司法書士の片岡和子です。
3月に入ってもう10日め。
写真はチューリップです。
これからどんどん大きくなるんだろうな。
楽しみです。
今日は、遺産分けの話し合い(=遺産分割協議)のお話です。
遺産分割協議で問題になりがちなのが生命保険金。
亡くなった方が保険に入っていて、相続人のうちのひとりが受取人になっている場合。
遺産分割の際に、この生命保険金を考慮に入れるべきか? ということが争いのタネになってしまうのですね。
生命保険金は、受取人だけで手続きをして受け取ることができます。
他の相続人が関わる必要はありません。
ですから、保険金を受け取ったことは他の相続人に知られないまま、ということも、実は多いのです。
でも、何かの拍子にこれがバレると、一気に紛争に発展してしまうことがあります。
根っこにあるのは「不公平感」だろうと思います。
要するに、「ズルい!」ということですね。
受取人が配偶者(夫または妻)である場合には、この「ズルい!」という感情が発動されることは少ないように思います。
子供が複数いる場合、きょうだいのうちの一人が保険金を受け取った場合に、「ズルい!」が沸騰して、噴火するようです。
この感覚は、理解できるような気もします。
でも、今日のこの記事で、結論をしっかりと覚えていただきたいです。
生命保険金は遺産ではありません。
従って、遺産分割の対象にはなりません。
なぜ? と思われる方もいらっしゃるでしょう。
正直なところ、「ナルホド!」と思えるような説明は見つかりません。
なので、「何故なのか」は脇へ置いて、結論だけを覚えておいてください。
ここを押さえておかないと、無用な争いが勃発してしまいます。
遺産分割協議で、
「兄さんは生命保険金を受け取っただろう?」
「うん、受け取った。だからその分遺産の取り分は少なくていいよ。」
という話になって、相続人全員に異議がないのならば、それはそれでよいのです。
では、
「兄さんは生命保険金を受け取っただろう?」
「ああ、受け取ったよ。でも保険金は遺産とは関係ない。」
「それは不公平だよ、保険金の分も入れて考えないと。」
という展開になった場合はどうなるのでしょう。
弟があくまでも「保険金を考慮しての平等」を主張した結果、協議がまとまらずに決裂すると、家庭裁判所で「遺産分割調停」をするしかなくなります。
でも、遺産分割調停では、「生命保険金は遺産ではありませんから、調停の対象ではありませんよ。」と、軽~く言われてオシマイ、です。
生命保険金は外して、本来の「遺産」についての話し合いが進んで行くことになります。
ですから、弟としては、遺産分割協議の段階から生命保険金については諦めた方がよいのです。
もともと勝ち目がないのですから。
ただ、例外もあります。
不公平があまりにも大きい場合です。
相続人のうちの一人が1億円の生命保険金を受け取った。
被相続人には遺産はほとんどなく、他の相続人たちが受け取ったのは50万円ずつだった・・・なんていう場合には、さすがに考えなくてはいけません。
そんな場合にはどのように考えるかというと、1億円の生命保険金を「特別受益」に準じて扱う、ということになります。(めったにないケースだと思いますので、詳しい説明は省略します。)
あ、もうひとつ、紛争になるパターンを思い出しました。
「兄さんは生命保険金を受け取っただろう?」
「うん、受け取ったよ。500万円だった。預金やら何やらの合計が1000万円だから、これに500万円を加えて、遺産は1500万円。これを分ければいいんだよね。」
「そうだよね。」
という具合に話が進んでいたのが、後日、
「生命保険金は遺産じゃなくて、受取人の固有の財産らしい。だから500万円は僕のものだ。遺産は1000万円だから、これを法定相続分で分けることになる。」
と、話が変わってしまう、なんてことがあります。
入れ知恵したのはヨメか、友人か、もしかしたら法律相談などに出向いたのかもしれません。
寝耳に水の弟としては、まさに「ズルい!」と叫びたくなるでしょう。
でも、この「入れ知恵」の内容そのものは間違ってはいませんから、弟としては、やはり諦めるしかないでしょう。
いかがでしょう。
「何だか納得いかないなあ・・・」と感じた方もいらっしゃるかも。
でも、納得いかなくても、無用の争いは避けた方がよいです。
遺産分割の争い、特にきょうだい間の争いは、こじれてしまうと、数年がかりの争いになることもあります。
そして、次の世代にまで禍根を残すことも多いのです。
無用の争いを避けるには、まずは正確な知識から。
その上で、感情に流されない冷静な判断をしていただきたいと思います。
【2022年4月6日追記】
生命保険金は遺産ではありませんが、相続税の課税対象となる場合があります。
その点には十分にご注意ください。
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