勝手に深読み・民法896条【相続の一般的効力】「義務」が重くなる時代。

こんにちは。司法書士の片岡和子です。

先日、両親のところへ行ってきました。

写真は庭で見つけたスイセン。可愛い!

両親のところへ行った時には、庭の植物たちを見てまわるのが大好きなのです♪

 

さて、今日は民法のお話です。

専門的な解説ではありません。

民法の条文を読んで、思いついたことを気楽に書き散らかそう、という趣旨。

今日の題材は896条です。

まずは条文を。

 

民法第896条【相続の一般的効力】

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りではない。

 

後半部分は「一身専属権」のお話なのですが、別の機会にまわすことにして、今回は無視しましょう。

前半部分にご注目ください。

相続とは何か、がシンプルに書かれています。

相続とは「亡くなった方の財産に属した一切の権利義務を承継すること」なのです。

今の世の中、あちらでもこちらでも「相続」の話でもちきりです。

でも、その中身は「うまくやるテクニック」みたいなのばかり。

「そもそも」が語られることは少ないように感じます。

この条文は、とても重要な「そもそも」が書かれていますから、素人の方にもぜひぜひ読んでいただきたいなあ、と思うのです。

ポイントは「権利義務」というところ。

「権利だけじゃないよ、義務も含めて一切を引き継ぐんだよ!」という点がキモなのです。

「そんなこと知ってるよ!」でしょうか?

確かに「借金が多いときは相続放棄を検討すべき」といった話はあちこちでなされていて、「相続放棄をしなければ義務も引継ぐことになる」ということを理解している方は多いと思います。

ただ、「義務」とは「借金」みたいにわかりやすいものだけではないのです。

特に、今の時代は「思わぬ義務」が降りかかってくることがあるのです。

たとえば不動産。

一昔前までは、土地や建物はとても重要な財産でした。

「相続争い」が実質「不動産の奪い合い」を意味することも多かったと思います。

でも、今はどうでしょう。

日本のあちこちに「誰も欲しがらない土地や建物」が存在するようになりました。

所有者が亡くなると、誰かがその不動産を引き継がなくてはなりません。

というか、「誰かに引継がせなければならない」のです。

不動産に限ったことではありませんが、誰が権利(及び義務)を持っているのかがハッキリしないと、世の中がカオスになってしまいますから。

不動産を相続すればもちろん管理する義務が発生します。

相続による不動産の名義変更が義務化される、と話題になっていますが、あれは「責任の所在を明らかにする」という意味もあるのです。

相続した不要な土地を手放して国に帰属させる制度も始まりますが、自分で手続きをしなければなりませんし、もちろん費用は自分持ち。

建物があれば取り壊し、必要ならば測量をして境界を確定させ、負担金を国に納め・・・大変です。

 

ちょっと話を変えましょう。

賃貸マンションで一人暮らしをしていた人が亡くなったら、賃貸契約はどうなるのでしょう?

何となく「契約は自動的に終了する」と考えている方が多いのではないでしょうか。

違うのです。

「賃借権」は財産権で、原則として相続の対象となるのです。

逆に言えば「誰かが、もしくは全員で相続しなければならない」ということ。

そして「家賃の支払い」などの義務も承継することになります。

そこに住む必要がないならば契約を解除することになりますが、それに伴う義務(荷物の搬出・明け渡しなど)も相続人の義務です。

「賃貸マンションやアパートで一人暮らしをする高齢者」は今後どんどん増えていくでしょうから、その後始末をしなければならない相続人も増える、ということですね。

 

いかがでしょう。

相続は「権利」だけではない、「義務」を負う場面も多い、ということがイメージ出来たのではないでしょうか。

「借金が多ければ相続放棄を」といった単純な問題ではないのです。

プラスの財産が多い場合でも、対応しなければならない「義務」があれこれとくっついてくる、それが相続なのです。

特にこれからの時代は。

少子高齢化は相続の場面にも影響を及ぼすだろうなあ、義務を負う場面が増えてくるのではないかなあ、という気がしています。

 

 

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2023年2月2日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka