こんにちは。司法書士の片岡和子です。
寒い日が続きますが、ベランダの植物たちはとっても元気。
写真はマーガレットです。
蕾がふくらんで、黄色の花びらが少し見えてます。
開花が楽しみです♪
さて今日は「遺言は万能ではない」の4回目。
「二次相続についての指定はできない」というお話です。
高齢の方とお話をしていて、よくあるのがこんな内容。
「自分が死んだら、妻が生活に困らないように、財産は全部妻に相続させたい。その後妻が死んだら、家は長男に相続させ、その他の財産は二男に相続させたい。遺言書を作成しておけばよいのですよね。どんなふうに書けばよいのですか?」
で、私が「遺言で二次相続についての指定はできないのですよ」とお話すると驚かれます。
「なぜですか? 自分の財産をどうするか、自分で決められないのですか? それを可能にするのが遺言なのでしょう?」と。
これはなかなか難しい質問です。
「自分の財産なのに」という素朴な感覚は強烈で、納得を得られる説明は困難なのです。
私はこんな場合、次のような説明を試みます。
「奥さんが財産を相続すると、その財産は奥さんのものになります。自分の財産なのですから、それをどうするかは奥さんの自由。奥さんが亡くなった後の二次相続について遺言で指定するのは、奥さんの自由を奪うことになってしまうワケで、そんなことはできないのです。」
これで納得する方もいらっしゃいますし、やはり納得できない、という方もいらっしゃいます。
そんな時には、こんな例を挙げてみたりします。
「あなたが亡くなられた後、奥さんが要介護の状態になって老人ホームに入りたくなったとします。でもお金が足りない。家を売れば何とかなるけど・・・こんな場合に『家は長男に残さなければならない』という縛りがあったら、奥さんは一体どうすればよいのでしょう。」
こういうお話をすると、「ああ、そうですねえ・・・。」と納得されることも多いです。
具体的な場面をイメージしていただくことで納得が得られやすくなるのですね。
それでもやっぱり納得がいかない、自分が築いた自分の財産、先々のことまで自分で決めておきたい、という方もやっぱりいらっしゃるかと思います。
その場合は「二次相続の指定」とは異なる別の方法を考えなくてはなりません。
例えば「信託」。
これは一定の財産を相続財産から切り離して管理・運用する方法です。
大変理解の難しい制度ですので、素人のできることではありません。
専門家への相談が必須ですので、かなりの費用がかかります。
もちろん万能の制度ではなく、できることには限界があります。
他に考えられるのは「配偶者居住権」の利用。
長男に家を相続させ、妻には配偶者居住権を遺贈する。
そうすると、家は妻への相続を経ずにダイレクトに長男のものになり、妻は住み慣れた家に住み続けることができます。
しかし、これをやってしまうと「家を売って、そのお金で老人ホームへ」はできなくなります。
家は妻のものではなく、長男のものになってしまっているのですから。
家以外に十分な資産があって、妻がそれを相続するならよいのですが、そうでなければこの方法は危険、ということですね。
「最後まで妻が元気で自宅で過ごせて、老人ホーム行きは起こらない」ということに賭ける、という状況になってしまいます。
う~ん、ムズカシイですねえ。
結局のところ、「自分の死後のこと全てをコントロールすることはできない」という理解と割り切りが必要なのでは、と思います。
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