こんにちは。司法書士の片岡和子です。
寒くなりましたねえ。
今朝の東京は今シーズン一番の冷え込みだったようです。
さて、今日は相続・遺産分割のお話。
「相続で不動産の共有は避けるべき」とよく言われます。
本当にそのとおり。
その時はよくても、いずれ必ず問題が起きてきます。
まさに「時限爆弾」のようなもの。
次のようなケースを考えてみてください。
父Aが亡くなったが、めぼしい財産は自宅の土地・建物のみ。
相続人は長男Bと二男Cの二人。
この家には長男B一家が住んでいる。
母が亡くなった後、Aの一人暮らしを心配したBが同居を始めたのでした。
Bはできれば住み慣れた家に住み続けたい。
Aの遺産に預金等が十分にあれば、家はB、預金はC、といった遺産分割ができるのだけど・・・。
あるいはBに資力があれば、家をもらう代わりにCにお金を渡す、という解決もできるのだけど・・・。
Bにはそれだけの資力がありません。
Cの提案は
「自分は何もいらない、というワケにはいかないし、不動産を2分の1ずつの共有にするしかないね。兄さんはそのまま住み続けていいよ。」
というもの。
結局、家はBとCの共有となったのでした。
さあ、爆弾は仕掛けられました。
時限爆弾です。
しかも、いつカウントダウンがスタートするか決まっていない時限爆弾。
スタートのきっかけは、やはり「Cにおカネが必要になる」でしょうねえ。
結婚が決まった、とか。
事業に失敗した、とか。
で、CはBに「自分の持分を買い取ってもらえないか」と打診することになります。
ここでBにおカネがあれば一挙解決、スッキリ!です。
家は完全にBのものになり、Cはまとまった金額を手にすることになります。
でも、Bにそれだけの資力がなければ、そうはいきません。
Cは「持分を買い取れないなら、売って代金を半分に分けるしかない。」と言います。
Bは「何を今ごろ! オレに出て行けと言うのか! 話が違うじゃないか!」と叫び・・・
あとはお決まりの泥沼、というワケです。
この話、いかが思われますか?
Bが気の毒だと感じますか?
いやいや、それは違うのです。
共有物の共有者には、分割を請求する権利があるのです。
Cには法律上の権利があるのです。
(ご興味のある方は民法256条をご確認ください。)
話し合いで解決できなければ、裁判で決着をつけることになります。
(ご興味のある方は民法258条をご確認ください。)
実はこの話、そもそも最初から間違っていた、とも言えるのです。
Aの遺産が不動産しかないのならば、売って代金を分けるのがベストだったのでは? というケースなのです。
BはAの死後も居住を続けるうちに、自分に全ての権利があるかのような錯覚に陥ってしまったのでしょう。
でも、Cには共有者としての権利があるのです。
もしもBが頑なに分割に応じようとしないなら、Cは自分の持分を売ってしまうことも出来ます。
こんなヤヤコシイ不動産の持分を買う人なんて・・・いるらしいですよ。
すると不動産は、Cから持分を買い取った見ず知らずの第三者との共有となり・・・考えただけでもオソロシイ展開になるのです。
繰り返しになりますが、それでもBは文句は言えないのです。
そもそも共有というのは、そういうものなのです。
では、遺産分割で「共有」は絶対にダメなのかというと、許容できる場合もあると思います。
今すぐは無理だけど、近い将来に持分を買い取れる見込みがある、とか。
1年後に退職金が入る、といった場合が考えられますね。
実は、共有者間で「5年を越えない期間内は分割をしない旨の契約」をすることが認められています。
(不動産の場合、登記をしておく必要があります。)
これを活用するのもよいかもしれません。
共有物分割の権利行使を一定期間封じておき、その間に持分買い取りの資金の準備をする、ということですね。
いかがでしょう。
相続・遺産分割の場面での不動産の共有は時限爆弾のようなもの。
そもそも共有を避けるのが一番。
どうしても、という場合には、当初から「早い時期の共有の解消」を視野に入れておくことが必須。
せひ覚えておいてくださいませ。
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