こんにちは。司法書士の片岡和子です。
事務所近くの線路沿いでスイセンを見つけました。
可愛らしい姿です♪
ちなみに右上の黒いモノは通過中の電車でございます。
さて、今日は成年後見の話題です。
時々「成年後見制度の利用をしないで済む方法はあるのですか?」といった質問を受けることがあります。
そんな時私は「なぜ成年後見制度の利用を避けたいのですか?」と尋ね返すことが多いです。
多いのは「財産が自由にできなくなるから」というお答えです。
中でも「相続税対策ができなくなるそうですね、それは困るのです」というお答えが目立ちます。
そして「成年後見制度はオカシイと思います。認知症になって後見人がついてしまったら相続税対策もできなくなってしまうなんて。」という話に発展したりするのですが・・・
私はオカシイとは思わないです。
なぜなら・・・
(あ、ここは「認知症の高齢者」に話を限定することにします。成年後見制度の利用者は認知症高齢者だけではないのですが、話をわかりやすく単純化するためです。)
現在、成年後見制度に関わる者の間では「成年後見人が相続税対策をすることはできない」というのが共通認識になっています。
なぜか? というと「後見制度はご本人のための制度であり、周囲の人たちの便宜のための制度ではないから」というのが最もシンプルな答えだと思います。
相続税対策をしないまま亡くなっても、ご本人は何ら困ることはありません。
「相続税対策をしておいて欲しかった」と考えるのは、相続人の方々です。
そして、そんな気持ちを先取りする形で、「相続税対策にはコレ!」といった宣伝がネット上などに溢れることになります。
そして、それを見た子供たちが高齢の親御さんに「相続税対策を!」と迫ることになるのですね。
そして、親御さんが既に認知症になってしまっていて専門職の後見人がついていると、後見人に対して「相続税対策を!」と迫るワケです。
で、後見人が「できません。」と答えると「なぜですか?」ということになります。
すると「後見制度はご本人のための制度であり、私の仕事はご本人を守ることであって、あなたの利益のために動くことではありません。」という答えが返ってきて・・・
あらら、何だか話がループしてますね。
ここで少し別の視点を入れてみましょう。
「ご本人は認知症になるまで相続税対策を行っていなかった」という事実に着目してみるのです。
そういうことを気にして準備するタイプの人であったら、ある程度の年齢になるまでに何らかの対策をしてあったはずです。
それがなかったということは、「特に相続税対策はしなくてよい」というのがご本人の考え方なのだなあ、そういうタイプの人なのだなあ、と専門職後見人は考えるのです。
「それは本人が無知だったからであって、きちんと説明すれば対策してくれたはず、だから今からでも何かするべき」という反論が聞こえてきそうです。
でも、「無知だったこと」も含めて、それがご本人のキャラクターである、と考えるのです。
その結果「ご本人の意思を越えて後見人が余計なお世話をすることはない、たとえそれで周囲の方々の反感を買うことになっても」という態度を選択することになるのです。
いかがでしょう。
納得いただけましたでしょうか。
納得いただけないでしょうねえ・・・。
私のお話していることは「ご本人の財産はご本人のものであり、それをどうするか決めるのはご本人である。何もしないこともまたご本人の自由である。」という考え方に立っています。
でも「相続税対策を!」とおっしゃる周囲の方々の価値観はそれとは異なるようです。
どちらが正しいのか。
私は自分が正しいと思っていますが、実は「正しさの基準は時代の空気によっていくらでも変わってしまう」とも思っています。
「相続税対策を!」という声が大きくなって、それが時代の空気になってしまうこともあるかもしれない、ということ。
そうなってしまったら・・・私は専門職として後見人を引き受けるのをやめよう、と思っています。
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