こんにちは。司法書士の片岡和子です。
9月に入ったけど、まだまだ暑いですねえ。
写真は事務所近くの線路脇で見つけたお花。
とっても涼しげで可愛らしいです。
あれこれ調べてみたところ、どうやら「ニラ」みたいです。
さて、今日は久しぶりに成年後見のお話です。
親族後見人の方々にぜひ知っておいていただきたいことがあるのです。
それは「後見人にはとても高度な注意義務が課せられている」ということ。
これをしっかりと理解しておかないと、大変なことになってしまうのです。
ものすごく大切なことなので、法律の条文をきちんと見ておきましょう。
頑張ってお付き合いください。
民法869条です。
後見人になったら絶対に知っておかなければならない、とてもとても重要な条文です。
民法869条には「第644条及び第830条の規定は、後見について準用する。」と書いてあります。
・・・何のことやら? ですよね。
「準用」というのは、ある事項に関する規定を他の類似事項にもあてはめること、と考えておけばよいでしょう。
つまり、民法869条は「644条と830条の規定は、後見についてもあてはめる。」と言っているのです。
今日のお話で取り上げたいのは644条のほうですので、さっそく民法644条を見てみましょう。
民法第644条(受任者の注意義務)
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
644条は「委任」に関する条文です。
これを「後見にもあてはめる」ということは「後見人は、後見の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、後見事務を処理する義務を負う。」ということになります。
では、「善良な管理者の注意義務」とは?
これは「善管注意義務」(ゼンカンチュウイギム)とも言われることが多いです。
意味の説明はとても難しいですが、「社会的立場などから考えて一般に期待される程度の注意義務」と考えてみるのがわかりやすいかな、と思います。
医師や弁護士の場合を考えてみましょう。
医師や弁護士に対して一般的に期待される注意義務って、かなり高いものですよね。
だって、専門家なのですから。
では「後見人」はどうでしょう?
後見人は、被後見人の権利を守る立場として家庭裁判所から選任される、特別な存在です。
大きな役割を持つ、重要な「社会的立場」にあると言えます。
ですから、普通の人よりは重い注意義務、すなわち「善管注意義務」が課せられることになるのです。
これは、後見人が弁護士や司法書士といった専門職であることから生じてくる注意義務ではありません。
「後見人」であることそのものから生じてくる注意義務です。
すなわち「親族後見人」であっても同じである、ということです。
また、報酬を受け取るかどうかによって注意義務の程度が変わるわけではありません。
ですから「自分は親のために後見人になり、お金ももらわずに財産管理を行っている。いわば『やってあげている立場』なのだから、ちょっとぐらい流用したって問題ないだろう」という考え方は通りません。
いいかげんな管理をしたり、自分の財産と被後見人の財産をごっちゃにしてしまったり、というのは「善管注意義務違反」となります。
場合によっては、後見人として不適格であるとして、解任されてしまうこともあるのです。
・・・ここまで読まれた親族後見人の方は、もしかしたらちょっと怖くなってしまうかもしれませんね。
実際に、どこまで厳密な財産管理をすればOKなの、などと。
これについては、各家庭裁判所から「手引き」や「Q&A」のようなものが出ていると思いますので、それを熟読するのがよいです。
というか、熟読すべきです。
「え? これってマズイことだったの?」なんてこともあるようですので。
以前から親御さんに頼まれてお金の管理をしていた、という方が正式に後見人になった場合などは特に危ないです。
それまでと同じ感覚で財産管理を続けると落とし穴にはまります。
ぜひ「親族であっても成年後見人には高度な注意義務が課せられている」ということを肝に銘じていただきたいです。
☆こちらの記事も読んでみてね☆
★成年後見制度の利用を完全に確実に回避する方法は・・・ない。