任意後見の限界と法定後見への移行

こんにちは。司法書士の片岡和子です。

ガーデンシクラメンが次々と咲いています。

一昨年に購入して、たくさん咲いてくれて、昨年の夏を休眠せずに越した強いヤツです。

お店に並んでるシクラメンとちょっと違うでしょ。

お店のは、見栄えをよくするために花を中央に集めてあるのです。

私はナチュラルな状態が好きなので、好きな方向へ伸びる花芽を放置してます。

その結果、こんな具合に取っ散らかってる、というワケ。

 

さて。

今日は任意後見のお話です。

このごろちょっと、「任意後見」というネーミングには誤解を生む面があるなあ、なんてことを考えてます。

私自身も、任意後見制度について「自分の判断能力が低下したときに後見人になってくれる人をあらかじめ決めておける仕組み」といった説明をすることが多いです。

ざっくりした理解をしていただくためには、ざっくりした説明が効果的、ということなのですが、「後見人」という言葉の持つイメージが問題なのです。

とても大きくて広い包括的な権限を持つ存在、という感じがしてしまうのですね。

もちろんこれは法定後見制度の成年後見人から来るイメージです。

実は、任意後見の「後見人」はちょっと違うのです。

任意後見人の権限は「任意後見契約」の内容によって決まります。

判断能力が低下した場合に必要になりそうな代理権をリストアップしておく、という形を取るのです。

そして任意後見がスタートすると、任意後見人は与えられた代理権を行使しながら任務を遂行していくことになるのです。

ご本人が高齢者施設に入所する、という場面を考えてみましょう。

任意後見人は「施設入所契約の代理権」を使って老人ホームと契約をします。

銀行口座から利用料の引き落としをする手続きには「金融機関との取引の代理権」が必要ですよね。

住まなくなった自宅を売るには「不動産売却の代理権」がなければなりません。

ですから、任意後見契約の際には、必要になりそうな代理権をもれなく入れておくことが大切になるのです。

ところが・・・

ありったけの代理権を設定しておいたとしても対応できない事態、というのが起こることがあるのです。

ご本人が不必要な物を大量に購入してしまった、なんていう場合。

法定後見の成年後見人にとっては対応は簡単です。

取り消しをすればよいのです。

民法第9条には「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」と書いてあります。

でも、任意後見人には「取消権」がありません。

こういった事態に対応できるだけの大きな権限があるわけではないのです。

これが任意後見の限界です。

ではどうするか、というと、法定後見へ移行すればよいのです。

既に任意後見がスタートしているケースでは、専門職の「任意後見監督人」がついていますから、具体的にどのような手続きが必要になるのか等は監督人に相談すればよく、それほど心配することはありません。

それまで任意後見人としてきちんと任務を果たしていたのであれば、同じ人物が成年後見人に選任してもらえる可能性が高いと思います。

自分の手には余る、対応が難しすぎる、ということであれば、これを機会に専門職に任せる、という選択肢もありです。

いかがでしょうか。

なるほどね、と思っていただけましたら幸いです。

 

 

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2020年2月12日 | カテゴリー : 成年後見 | 投稿者 : Kazuko Kataoka