任意後見受任者が必ず任意後見人になれるとは限らない。

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こんにちは。司法書士の片岡和子です。

ゴールデンウィーク終わってしまいましたねえ。

私は両親のところへ行ったり、近場での街歩きを楽しんだり、そして、植物のお手入れ。

写真はサフィニアです。

冬越ししたんですよ~。あの寒い冬を。

そして再び成長してます。

また季節が巡ってきたのですねえ。

 

さて、今日は任意後見のお話です。

将来自分の判断能力が低下してしまった時のために、あらかじめ、後見人になってくれる人と契約をしておく、というのが「任意後見契約」です。

「この人に委ねたい!」という願いをかなえてくれる、とてもよい制度だと思います。

任意後見契約を締結すると、任意後見人予定者は「任意後見受任者」となります。

この状態では、まだ任意後見人ではありません。

「任意後見人になることを引き受けた人」ということです。

実際にご本人の判断能力が低下した時点で、家庭裁判所に申立てをして、正式に任意後見人となるのです。

この、正式に任意後見人となるための手続きは、実は、「書類が揃っていればOK」というものではありません。

実質的な審査が行われるのです。

 

ここから先は、現時点での東京家庭裁判所での扱いです。各家庭裁判所によって対応が異なるかもしれませんので、ご注意ください。

 

必要書類を揃えて家庭裁判所へ提出すると、任意後見受任者は調査官の面接を受けます。

そこでいろいろと話を聞かれます。

その目的は「任意後見人として適任かどうか」の見極めです。

特に「財産管理が適切にできる人物かどうか」を見ているのではないかなあ、と思います。

任意後見契約をする場合には、同時に「財産管理等委任契約」を締結することも多いのですが、その場合には、適切な財産管理を行っているかどうか、ということも大きなチェックポイントになるようです。

判断能力が十分なうちから財産管理などを委ねる、というのが「財産管理等委任契約」なのですが、実は、これが契約の内容どおりに果たされていない、というケースも結構あるようです。

受任者が専門職であれば通常そのようなことは考えられません。

でも、受任者が親しい親族である場合、「契約である」という意識が低く、「身内としていろいろとやってあげてる」という程度の認識であることも多いようです。

すると、調査官から

「財産管理等委任契約では、ご本人に対して定期的に書面で報告することになっていますが、きちんと報告書を作っていますか?」

などと聞かれて、

「えっ・・・そんな必要あったんですか?」

なんてことも起こります。

(アパートを借りたけど賃貸契約書なんて読んだことないよ、なんていうのと同じような感覚なのでしょう。)

実際には、こういう展開になったからといって、即「この人物は任意後見人として不適任!」となってしまうワケでもないようです。

「多少認識が甘い人物のようだけれど、任意後見人になって欲しい、というご本人の意思を尊重して・・・」ということで、無事に任意後見人になれる場合が多いようです。

任意後見制度では、必ず専門職の任意後見監督人がつきますから、監督人の指導を受けながら、今後は適切に財産管理をやってもらえれば、といったところなのでしょう。

任意後見制度のよいところは、何と言っても「自分が希望する人物に後見人になってもらえる」という点ですから、余程のことがない限り、その希望に沿うのがよい、という考え方が根底にあるのだろうと思います。

ただし、「余程のこと」があれば話は別、になると思われます。

「本人の希望」よりも「本人保護の要請」の方が大きくなるような事情が判明した場合には、任意後見受任者が任意後見人になれない、という事態もあり得ます。

最終的には裁判官の判断です。

この「余程の事情」が具体的にどんな状況なのか、については、私は今のところ、いろいろとお話しできる十分な材料を持っていないです。

この先、いろいろな事案に触れて、何かしらお話しできる材料が出来たら、また詳しく書ければいいな、と思ってます。

 

今日は任意後見のお話でした。

これから任意後見契約をしようと考えている方、既に任意後見受任者になっている方などの参考になりましたら幸いです。

 

【2022年3月9日追記】

この記事は2018年に書いたものです。

久しぶりに読み返してみて、「まずまずお役に立ちそうな内容だな」と改めて思いました。

ただ、「わかりやすさ」を優先したため、法的な根拠を示していませんでした。

気になる方は、「任意後見契約に関する法律」の第4条第1項をご確認ください。

任意後見受任者が「不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者」である場合は任意後見監督人の選任はなされない、ということが書いてあります。

「任意後見監督人の選任がなされない」とはつまり、「任意後見はスタートしない」ということです。

家庭裁判所は、この条文に該当する事情があるかどうかを審査する、ということなのです。

参考になりましたら幸いです。

 

 

☆こちらの記事も読んでみてね☆

★任意後見制度とは

★任意後見と見守り契約

★財産管理等委任契約とは

★任意後見制度は機能している、と感じます。

★任意後見の限界と法定後見への移行

★任意後見について考えてみたら、自分は本人の側だった、という話。

 

 

2018年5月7日 | カテゴリー : 成年後見 | 投稿者 : Kazuko Kataoka