こんにちは。司法書士の片岡和子です。
写真はビオラです。
レモンイエローと薄紫。
これ、寄せ植えじゃないんですよ。
一株なんです。
開花してすぐは黄色で、だんだん色が青く変化するんです。
ビオラの品種の多さ、すごいですよね。
毎年シーズンが来ると、どれにしようか、と迷います。
で、今年選んだのがこれ。一株でたっぷり楽しめます!
さて、今日は遺言のお話です。
2か月ほど前に
~「相続人の事務負担を軽くするための公正証書遺言」もアリ。 ~
という記事を書きました。
特にモメそうな事情がなくて
「ウチは争族対策なんて必要ないけど・・・」
という場合であっても、公正証書遺言を作成しておくと相続人の事務処理がラクになる、特に不動産の名義変更には威力を発揮する、というお話でした。
遺言がない場合、「誰が不動産を相続するか」は話し合いで決めることになります。
これを「遺産分割協議」といいます。
話し合いの結果、不動産をもらう人が決まると法務局で名義変更の手続きをするのですが、その際には、実印を押した「遺産分割協議書」を提出することになります。
印鑑証明書もつける必要があります。
相続人の中に遠方の人がいたりすると、遺産分割協議書に署名押印するのも手間がかかります。
公正証書遺言があると、この手間がなくなってラクになる、というワケなのです。
とはいえ、公正証書遺言作成は費用のかかる話ですし、相続人全員が協力的で、手間をかけることを厭わない、というのならば、遺産分割協議書を作成すればよいだけのことです。
でも、相続人の中に行方不明の人がいる場合は?
そもそも遺産分割の話し合いが出来ませんよね。
もちろん遺産分割協議書が作成できるワケもなく、不動産の名義変更はできない、ということになります。
こんな場合、どうにもならないのか、というと、そんなことはなくて、民法では対応方法が用意されています。
不在者財産管理人の制度や、失踪宣告の制度です。
これらを使えば最終的には何とか決着をつけることができます。
でも、これらは気軽に使えるものではありません。
煩雑な手続きが必要になるのです。
ですから、問題が生じることがあらかじめ予想できる場合には、これらの制度を使わずに済むように手を打っておいた方がよいのです。
例えば、子供たちのうちの一人が家出をして行方不明である場合。
「親が亡くなって不動産が残されたら、遺産分割協議ができず、名義変更手続きができない」
ということは、あらかじめわかっていることです。
問題が起きることがわかっているのに準備をしない、というのでは、親として情けない、と言ってもいいくらいだと思います。
しかも「準備」というのは「公正証書遺言を作成しておくこと」であって、それほど難易度の高いものではないのです。
公正証書遺言で「○○の不動産は〇○に相続させる」としておけば、行方不明の子の協力がなくても名義変更ができるのです。
「遺言が効くことはわかった。でも自筆の遺言じゃダメなの?」
という疑問にもお答えしておきましょう。
自筆証書遺言の場合、「検認」の手続きが必要になります。
遺言書の検認は家庭裁判所で行われます。相続人全員に「遺言書の検認を行いますよ」という通知が行き、出席した相続人たちの前で遺言書が開封されるのです。
ですから、検認の申立ての際には相続人を特定する必要があるのです。
申立書には、全員の住所氏名を記載することになります。
じゃあ、行方不明の相続人に関してはどうすればいいの? というと、私も実はよく知りません。
管轄の家庭裁判所に問い合わせて運用を確認する、ということになるでしょう。
こんな感じで、自筆証書遺言では結構ヤヤコシイことになってしまうのです。
なので、やはり公正証書遺言がよいのです。
長男は家出して行方不明、二男が同居してくれてる。家は二男に遺したい・・・。
こんな事情を抱えた家族は少なくないと思います。
そんな場合には公正証書遺言の作成をお勧めします。
以上、参考になりましたら幸いです。
【2021年11月2日追記】
先日、行方不明の相続人のいる遺言書検認に関わる機会がありました。
結論から言うと「行方不明者がいても遺言書検認は行われる」ということです。
先日の例では、戸籍の附票を取ってみたところ、何と「職権消除」の記載があったのです。
転出届をしないまま引っ越してしまい所在が不明になり、役所が職権で住民票を消除した、ということ。
遺言書検認の際に提出する関係者の目録の住所欄には「不明」と記載して、この戸籍の附票のコピーを添付して申立てをしました。
これで問題なく遺言書検認の手続きは進行して、終了しました。
「行方不明の相続人がいても遺言書検認は行われる」という結論はどこの家庭裁判所でも同じだと思います。
でも、どんなふうに記載するのか? 資料の提出が必要なのか? などは、家裁によって扱いが異なるかもしれません。
直接、管轄の家庭裁判所に問い合わせてみるのがよいと思います。
また、この時の経験を元に、新しい記事を書きましたので、よかったら読んでみてくださいね。
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