こんにちは。司法書士の片岡和子です。
写真は多肉植物ですけど、名前は不明。
先日、両親のところへ遊びに行った時、玄関の脇にたくさんあるのを分けてもらいました。
ぽきっ、と折ったのを三つ。
一週間はそのままにして切り口を乾かしてから土に挿す、その後一週間は水は与えない、と教わったとおりに、今日現在「土に埋まってるけど水はまだ」という状態です。
大きくなるかな~、増えるかな~、楽しみです。
さて、今日は遺言のお話。
遺言というと
「将来の遺産争いを避けるためには遺言を!」
「争族対策には遺言が必須。」
といったイメージがあると思います。
もちろん、それはそのとおりなのですけど、モメることは考えられない、というご家族の場合でも、遺言書を作成しておく意味はあるのです。
遺言書があることによって、相続の手続きがスムーズに進む場合があるのです。
典型的なのが不動産の名義変更。
夫名義の家に住む老夫婦がいたとしましょう。
夫は、自分が先に死んだら全ての財産を妻に、と考えていて、日頃から妻や子供たちにも伝えてあって、誰も反対する者はいない、という場合、夫は
「遺言を書いておかなくては」
とは考えないでしょう。
で、実際に夫が先に亡くなった場合に不動産の名義を妻に変更するにはどうするか、というと、これが結構メンドクサイのです。
不動産の名義変更は法務局へ申請するのですが、その際には
「相続人全員の合意で不動産は妻が相続することになった」
ということを示さなければなりません。
もちろん、窓口に行って口頭で説明してもダメです。
資料を揃えて書面で申請しなければなりません。
まずは「相続人全員」とは具体的に誰のことか、を示さなければなりません。
「誰が相続人か」なんてことは家族にとってはアタリマエかもしれませんが、法務局にとってはアタリマエではないのですから、きちんと資料で示さなければなりません。
そのためには、亡くなった方の戸籍を集める必要があります。
古いものまで遡って全て、です。
これが、煩雑な作業になることが多いのです。
このステップを何とかクリアしたとしても、その次の段階として、
「間違いなく相続人全員の合意がある」
ということを示さなければなりません。
具体的には、「遺産分割協議書」を作成して相続人全員が署名押印することになります。
押印は実印で行い、印鑑証明書を付ける必要があります。
子供たちが近くに住んでいて簡単に集まれるのだったら、特に難しいことではないでしょうが、遠方に住んでいる子がいると、ちょっと面倒になります。
海外赴任中の子がいたりすると、もっと大変です。
帰国するまで待つ?
書類を送る?
そもそも海外では「印鑑証明書」ってあるの?
と、???だらけになってしまいます。
こんな場合に、きちんと作成された公正証書遺言があれば、妻は、子供たちの手を煩わせずに自分一人で名義変更の手続きを行うことができます。
古い戸籍を集める必要もありません。
「自分一人で」って言われても、一体どうやって? ということであれば、司法書士に依頼すればよいのです。
司法書士は
「あ、公正証書遺言があるんですね。それなら簡単ですよ。お子さんたちには連絡を取る必要もないですよ。」
と言って引き受けてくれるでしょう。
・・・こんな具合に、紛争のタネが全くない場合でも、公正証書で遺言を作成しておく意味は十分にあるのです。
ただし、遺言書作成の費用がかかりますから、「費用」と「妻の事務負担の軽減」を天秤にかけて検討する、ということになるでしょう。
以上、何かの参考になりましたら幸いです。
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