こんにちは。世田谷区等々力の司法書士です。
東急大井町線の二子玉川~自由が丘間を主な行動範囲にしてます。
今日は公正証書遺言のお話です。
遺言というと、ご自身の命が長くないことを意識した高齢の方が、残された家族に紛争が生じないようにするためや、お世話になった人に財産を残したい場合に作成するもの、というイメージがあるかもしれません。
でも、実際には、健康な若い方でも遺言を作成されることがあります。
家族関係が複雑な場合、たとえば離婚した前妻との間に子がいるが前妻が引き取っている、現在の妻との間にも子がいるが、本人と現在の妻・子は本人名義の家に住んでいる、といった場合。
ご自分が突然死するようなことがあっても、現在の同居の家族が今の家に住み続けられるように、公正証書遺言を作成して遺産の分配を決めておく、などということがあります。
こんなふうに、実際には40代や50代の方でも公正証書遺言を作成されることがあるのです。
さて、こうやって作成された公正証書遺言が、ずいぶんと時間が経ってから表に出てくることがあります。
そして、それが紛争に発展することがあります。
80才で亡くなった方の公正証書遺言を長男が預かっていた。
その内容を二男が見てみると、長男に有利、自分に不利な内容である。
二男がよくよく遺言を点検してみると、父親が50才の時に作成されたものであることに気がついた。
遺言の内容に不満な二男は
「そもそも、30年前の遺言なんて、もう無効だろう!
遺言というのは、死ぬ前に作るものだろう?
そんなに前に作られた遺言が有効なわけがない!
それに、役所で作られたものには普通、有効期限ってものがあるだろう!」
と怒り始めます。
さて、この場合の二男の言い分は正しいでしょうか。
結論から言えば、遺言そのものに「有効期限」はありません。
ただし、複数の遺言があった場合には、新しいものが有効になります。
そして、古い遺言の内容のうち、新しい方の遺言の内容に抵触する部分は無効となります。
ですから、二男としては、日付の新しい遺言書が他にないかどうかを確認してみればよいのです。
もしも、他に新しい遺言が見つかって、そこに古いものとは違った内容が記載されていたとすれば、新しい方に記載された内容の方が、亡くなった時に近い時点での父親の意思、ということになるのです。
遺言は「最終意思」を尊重するものですから、いちばん新しいものが有効となるのです。
ところで、もしも他に遺言書が見つかったとして、それが自筆証書遺言であった場合はどうなるのでしょうか。
これについては、公正証書が優先などということはありません。
きちんと方式を満たしたものであれば、自筆証書遺言であっても、日付の新しいものが有効になります。
新しい遺言が見つからなければ、たとえ30年前に作成されたものであっても、それが本人の「最終意思」であることになり、その内容が実現されていくことになります。
ちょっと難しいお話になってしまったかもしれませんが、遺言とは、その人の最終意思の実現を目指すものであること、公正証書遺言に有効期限はない、ということ、覚えておいてくださいね。
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