こんにちは。司法書士の片岡和子です。
一昨日・昨日と連続で遺言書保管制度について書いてきました。
今日で「まとめ」としましょう。
特別な場合を除いて、主な遺言の方法は3つある、と言えます。
①公正証書遺言を作成する
②自筆証書遺言を作成して自分で保管、または誰かに預ける
③自筆証書遺言を作成して法務局で保管してもらう
②と③を比べると、やはり③がお勧めです。
紛失・改ざんなどの心配がなくなります。
検認が不要になりますので、残された相続人の方の負担が軽減されます。
(「戸籍集め」が不要になるワケではない、という点については一昨日の記事で書きました。)
(また、遺言書保管のために本人が法務局へ出向かなければなりませんので、病気等で動けない方は①または②を検討するしかありません。)
では、①公正証書遺言と③遺言書保管制度、どちらがよいのか?
これ、結局のところは費用の問題なのだと思います。
公正証書遺言の場合、「遺言書の案」を公証役場に持ち込んで内容を見てもらい、問題があれば修正してもらって、最終的に公正証書遺言が出来上がります。
公証人は「内容に踏み込んだ仕事をする」ワケで、それなりの手数料がかかるのは当然です。
遺言書保管制度では、「完成した遺言書」を法務局に持ち込んで保管してもらいます。
法務局は内容の検討などは行わず、保管の事務処理をするだけです。
手数料はかかりますが、お安いです。
現在のところ、3,900円です。
公正証書遺言の費用はどうかというと・・・
実は、公正証書の作成費用は「目的の価額」によって変わってくるのです。
財産の額が大きいと、公正証書遺言の作成手数料も多くなるのです。
イメージをつかんでいただくために、例を挙げてみましょう。
「奥さんに3000万円の不動産、息子に1000万円の銀行預金を相続させる」という内容の遺言の場合。
日本公証人連合会のホームページに掲載された資料から計算してみると、手数料は51,000円となるようです。
財産の額がもっと大きかったり、相続人の数が多かったりすると、手数料はさらに大きくなります。
公証人に出張をお願いした場合には、手数料が割り増しになりますし、交通費もかかります。
他にも遺言書正本・謄本の交付手数料などもかかります。
公正証書遺言の作成には証人2名が必要なのですが、これを自分で準備できずに公証役場に手配をお願いした場合には、証人の日当も必要になります。
・・・これをどう感じるか。
人それぞれだと思います。
これらの費用に抵抗を感じる方は、遺言書保管制度を利用されるとよいと思います。
その場合は、ご自身で「内容に問題がない遺言書」を完成させることが必須です。
自力で遺言書を完成させる自信のない方は、費用を払ってでも公正証書遺言を利用された方がよいかと思います。
さて、ここでオマケのお話です。
弁護士さんなどが「遺言作成○○万円」的な宣伝をしていることがあります。
あれは、弁護士さんが遺言書を作ってくれるワケではないのです。
公正証書遺言を作成するのは公証人です。
自筆証書遺言を作成するのは遺言者ご自身です。
弁護士さんなどはアドバイスをしたり遺言書案を作ったり、つまり「遺言書作成カウンセリング」、「遺言書作成サポート」なのです。
「○○万円」は、カウンセリング料、サポート料なのですね。
これは公証人の手数料や、保管の手数料とは別モノです。
必須の費用ではありません。
こういったサポートは利用してもよいし、もちろん利用しなくてもよいのです。
以上、3回にわたって遺言書保管制度について書いてきました。
参考になりましたら幸いです。
☆こちらの記事も読んでみてね☆
★【遺言書保管制度】①検認は不要だけど「戸籍集め」はやっぱり必要。
★【遺言書保管制度】②内容をチェックしてもらえるワケじゃない。