妻と子供全員が相続放棄をしたらどうなる?

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お気軽にご相談においでくださいね。

 

今日は相続放棄が思いがけない結果を引き起こしてしまったお話。

事案に沿ってお話しましょう。

 

[事案]

AとBは夫婦で、成人した子C、Dがいる。

Aは酒好きギャンブル好きで、多額の借金がある。

BはAに愛想をつかし、別居し、離婚を考えていた。

そんな矢先、Aが急死した。

夫の残した謝金を背負わされないためには相続放棄をすればいい、

という知識のあったBは、C・Dと相談し、全員で相続放棄の手続きをした。

これでAの相続人は誰もいなくなったのだからひと安心、

とBはほっとしていた。

 

いかがですか?

よかったね、Bさん、と思われましたか?

いやいや、このお話、続きがあるんです。

 

[事案の続き]

Aには年老いた両親EとFがいた。

貸金業者はEとFに、Aの残した借金を返せと要求した。

息子の残した借金ならば、親が返すのは仕方のないことだと考えたDとEは、少ない蓄えの中から必死に返済を続けたが、長くは続かず、結局は自宅を売って返済することになってしまった。

後日、この話を聞いたBさんは驚いた。

全員が相続放棄したんだから、借金はなくなったはず。

それなのに親のところへ取り立てが行くなんて、ひどい!

一体どうなってるの!

 

いかがですか?

皆さんはどう思われますか?

実は、この事案、Bさんには勘違いがあるのです。

Aさんの相続人はBさんとC、Dです。

この3人が相続放棄をすればそれで一件落着、とBさんは考えました。

ところが、実はそうではないのです。

BさんとC、Dは相続放棄をして、相続人ではなくなりました。

それによって、Aさんの両親であるEさんとFさんが相続人になったのです!

ですから、貸金業者がEさんとFさんに返済を求めたことは不当ではありません。

EさんとFさんはAさんの借金を相続したのですから。

では、この場合、どうすればよかったのでしょう。

BさんとCさん、Dさんが相続放棄をした後に、EさんFさんも相続放棄をすればよかったのです。

そうすれば、EさんとFさんも相続人ではなくなり、借金の返済を求められても拒むことができたのです。

でも、高齢のご両親には、相続放棄をすればいいなんてこと、おわかりにならなかったでしょう。

ですから、Bさんがご両親に事情を伝えてあげるべきでした。

「自分と子供たちは相続放棄をしたので、EさんとFさんが今度は相続人になったのです。

このままでは借金を背負わされてしまうので、相続放棄の手続きをしてくださいね。」

と知らせてあげる必要があったのです。

それから大事なことをもうひとつ。

この事案では、EとFが相続放棄したとしても、それで終わりにならないかもしれない、ということです。

EとFが相続放棄をすることによって、今度はまた別の人が相続人になることがあります。

それは、場合によってAの祖父母であったり、兄弟姉妹であったりするのですが、いずれにせよ、このようなケースでは、関係者全員が事情を知っておき、全員で対応していく必要があります。

中途半端な知識で対応すると、この事案のようなことが起こってしまいます。

知識があやふやだったり、難しいな、と思われた場合には、必ず専門家に相談してから行動するようお勧めします。

 

 

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2014年7月31日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka