こんにちは。司法書士の片岡和子です。
東急大井町線の尾山台と九品仏の中間地点あたりで開業してます。
今日は、ご親族の成年後見人になろうと考えておられる方向けのお話です。
成年後見の申立てをするには、申立書その他の書類を家庭裁判所に提出することになります。
申立て事情説明書やら戸籍やら診断書やら収支予定表やら・・・。
中でも大変かも、と思うのは財産目録です。
この財産目録は、ご本人の所有する不動産、預貯金、株式などを一覧表にしたものです。
これがなかなかやっかいなことがあります。
所有する自宅の住所はわかるけど地番がわからないときは、
不動産の権利証を探してみる、
法務局へ出向いて検索してみる、
という方法があります。
預貯金については、通帳を探してみる。
株式等については、証券会社からの郵便物から判明することがあります。
でも、なかなか短期間ですべてを把握することは難しいです。
自宅以外に不動産を所有していることを知らないこともあるし、
通帳をご本人以外の人が預かって管理していることもあるし、
証券会社からの郵便物は、しょっちゅう届くわけではないし。
そんな時には、完璧でなくてもよいので、申立て時点で判明しているものだけを記載し、のちに後見人に就任してから判明したものについては、次回報告以降の財産目録に追加で記載すればよいのです。
大切なのは、申立て時点でわかるものについては、きちんと調査をして正確な記載をすること。
添付すべき資料(不動産登記事項証明書など)はきちんと添付すること。
実は、家庭裁判所は財産の内容そのものだけじゃなく、財産目録等の申立て書類の「出来」も参考にしてるんじゃないか、と思うことがあるんです。
申立人自身が後見人になるつもりで後見申立てをした場合、
提出された書類が雑なものだったり、
明確な記載がされていなかったり、
不自然なところがあったりすると、
家庭裁判所は
「この人を後見人に選任して大丈夫だろうか?」
と考えてしまうようです。
それはそうですよね。
後見人は、本人に代わって財産の管理をし、定期的に家庭裁判所への報告もすることになるのですから、きちんとした財産目録を作成できない人に対しては不安を感じるのはあたりまえですよね。
事情が複雑な案件や、管理する財産が多い場合などには、家庭裁判所は、申立人が後見人になるつもりだった場合でも
申立人を後見人に選任せずに第三者の専門職を後見人に選任したり、
申立人を後見人に選任はするけれど、同時に専門職の後見監督人をつけたり、
ということをします。
その場合の判断要素のひとつとして
「申立書類からうかがえる、申立人の後見人としての適性」
というものも、どうやら見ているようなのです。
最初のほうでお話したとおり、財産目録の内容は、申立て時点で完璧でなくてもいいのです。
でも、判明しているものについては、きちんとした記載をするよう心がけてくださいね。
その他の書類についても、きちんとした事務のできる人物だと思ってもらえるように、丁寧な作成をするよう、気をつけてみてくださいね。
【2019年9月13日追記】
最近、「成年後見人には専門職よりも親族がふさわしい」ということが、よく言われています。
実は、それは「元々からそうだった」ことなのです。
「成年後見制度の利用が必要な方の親族に適任者がいるのならば、その親族が後見人を務めるのがよい」のは、いわば当たり前のことなのです。
ただ、「親族がふさわしい」ということと、「成年後見人に求められる財産管理レベルはどの程度か」という話は全く別物です。
親族であろうが専門職であろうが「他人の財産を責任を持って管理する立場である」ことに変わりはありません。
親族後見人であるからといって、「大雑把な財産管理でも許される」というものではないのです。
裁判所への報告内容に不明確な点があれば調査を受けることもありますし、その結果「不正があった」ということになれば解任されることもあるのです。
ご自身が成年後見人になるつもりで申立てをなさる場合には、その時点から「既に後見人としての財産管理は始まっているのだ」というぐらいの心構えで臨んでいただきたいと思います。
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