こんにちは。司法書士の片岡和子です。
事務所の近くで見かけたアジサイ。
咲き始めてます。
もうそんな時期なのですねえ。
さて、今日は相続のお話。
「相続放棄」について考えてみましょう。
あっちでもこっちでも「相続」は盛んに取り上げられてますねえ。
これだけ相続の話があふれていると、読んだり聞いたりしている方もつい「わかったつもり」になってしまいます。
でも、ちょっと待ってください。
そもそも「相続」って何でしょう。
ここは正確に理解していただきたいなあ、と思います。
手元の法律用語辞典によると
「人の死亡によってその財産上の権利義務を他の者が包括的に承継すること。」
となっています。
「権利義務」と「包括的」に注目してみてください。
権利だけじゃなくて義務も引き継ぐのが「相続」なのです。
そして、「ひっくるめて」引き継ぐのが「相続」なのです。
都合の良い部分だけを引き継ぐ、という態度が許されないのが「相続」なのです。
親が多額の借金を残して亡くなった・・・なんていう場合でも、全てをひっくるめて引き継ぐ、というのが基本なのです。
でも、それではあまりにも酷、気の毒、っていう場合もありますよね。
そこで民法には「相続放棄」の制度が用意されています。
法律に則って手続きをすれば相続を拒否することができる、それが「相続放棄」なのです。
相続放棄をする場合も「都合のよい部分だけ」は許されません。
権利も義務も、ひっくるめて放棄しなければならないのです。
こちら側から見て「義務」であることは、反対側から見れば「権利」です。
義務を放棄されてしまった相手方は権利の実現ができなくなってしまうのです。
それを考えれば、「義務を果たさないこと」と「権利を取得しないこと」がセットになるのはアタリマエだと納得できますよね。
(「限定承認」という制度もあるのですが、話がややこしくなるので、ここでは触れません。)
さて、ここまでは「法律上の相続放棄」のお話。
世の中では、これとはちょっとズレた意味で「相続放棄」という言葉がよく使われます。
遺産分けの場面で「自分は遺産はいらないから」という意思を表明する場合です。
「親父の遺産は全部兄貴に譲った、自分は放棄したんだ」などというふうに使われます。
「事実上の相続放棄」と言えますね。
この場合に念頭に置かれてるのは「権利」だけの場合が多い、ということに気をつける必要があります。
「義務」が抜け落ちています。
借金などが全くないなら問題ありませんが、もしも多額の借金があったとしたら「事実上の相続放棄」をしても義務から逃れることはできません。
「自分は何ももらわなかったんだから、当然義務も逃れられるはず」という訳にはいかないのです。
ここでちょっと付け加えておきましょう。
法律上の相続放棄をすると、「初めから相続人とならなかった」とみなされます。
ということは「遺産分けへの参加」もあり得ないことになります。
相続人ではないのですから。
法律上の相続放棄をすると、「相続には関係のない人」になるのです。
(お墓だとか仏壇だとかは、これとは別の問題です。念のため。)
いかがでしょう。
「法律上の相続放棄」と「事実上の相続放棄」をきちんと区別する必要がある、と理解していただけましたでしょうか。
なるほど、と思っていただけましたら幸いです。
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