こんにちは。司法書士の片岡和子です。
母の日にもらったアジサイがこんな色になりました。
シルクサファイアという品種です。
最初は薄紫だったのが緑一色に変化していたのだけど、今度は緑の上に赤みが差してきました。
不思議ですねえ。
さて、今日は相続放棄のお話です。
「法律上の相続放棄」と「事実上の相続放棄」をきちんと区別する必要がある、ということは先日書きました。→こちら
で、法律上の相続放棄が必要だと判断して、実際に相続放棄の手続きをした場合に「お墓はどうなるんだろう?」という疑問が出てきます。
これについては、民法の896条・897条を見てみる必要があります。
ちょっと頑張って条文にお付き合い下さい。
第896条【相続の一般的効力】
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし・・・以下省略。
第897条【祭祀に関する権利の承継】
①系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし・・・以下省略。
ごくごく簡単にまとめてしまうと、896条に書かれているのは「相続人は、権利も義務も何もかもを引き継ぐ」ということ。
そして、897条に書かれているのは「でも、仏壇やお墓については話が別」ということなのです。
法律上の相続放棄をすると、その人は相続人ではなくなります。
相続人ではないので権利も義務も引き継がない、ということになります。
でも、仏壇やお墓については話が別。
仏壇やお墓を引き継ぐのは、そもそも「相続人」ではないのです。
誰が引き継ぐのかというと、897条に書いてあるとおり「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者」です。
ですから、相続放棄をして相続人ではなくなったとしても、仏壇やお墓が継げなくなるワケではないのです。
逆に言えば、「自分は相続放棄したんだからお墓も関係ない」と言って逃れることもできない、ということ。
別問題である、ということなのです。
さて、もしかしたら「慣習」という言葉に引っかかった方がいらっしゃるかもしれません。
「いまどき慣習って? 長男が継ぐべきってこと?」と。
いえいえ、そういうワケではありません。
この「慣習」とは「社会生活の中で反復して行われ、ある程度まで人の行動を拘束するようになった一種の社会規範」のことです。
「お墓は長男が継ぐ」が一種の社会規範になっていた時期はあったかもしれませんが、現在はそうではないでしょう。
社会規範も時代と共に変わって行くものです。
ですから、実際には祭祀承継者の決定は「話し合いによる」ということになるでしょう。
話し合いがうまく行かない場合には家庭裁判所に申立てをして定めてもらうこともできます。
いかがでしょう。
なるほど、と思っていただけましたら幸いです。
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