こんにちは。世田谷区の司法書士です。
東急大井町線尾山台駅と九品仏駅の中間地点あたりで開業してます。
同じ言葉が、我々専門職が使う場合と一般的に使われる場合とで意味がずれていることは、よくあります。
そこに気づかないまま話が進むと、思いがけない誤解が生じることがありますので、気をつけないといけないなあ、と思うことは多いです。
以前にも、「相続放棄」という言葉について書きました。
→ 「法律上の意味と事実上の意味のズレ ~相続放棄の場合~」はこちら
今日は土地や建物の「名義変更」についてお話します。
こんな相談があったとしましょう。
「私は父母と同居しています。家は父の名義になっていますが、もしも父が亡くなったら、弟や妹がいろいろと言ってくるかもしれない。なので、今のうちに家の名義を私に変えておきたいんです。」
よくある話のように思われましたか?
でも、こういう相談をなさる方は、けっこう思い違いをされていることがあるんです。
名義を変えるのは自由なことで、単に届け出ればよいもの、だけど手続きがよくわからないので教えて欲しい、ぐらいのつもりでいらっしゃる方もいるのです。
でも、ことはそう単純ではありません。
この例では家の持ち主はお父さんです。
そして、お父さんが「所有者」として法務局に登記されています。
この「所有者」が変わる、ということは、何かしらの「原因」がなければなりません。
この「原因」がなければ、名義変更は受け付けてもらえないのです。
こういうと、
「だから、今のうちに名義を変更しておく必要があるんです、それが原因なんです、それじゃダメなんですか?」
ということになってしまったりするのですが、ここでいう「原因」とは、売買があった、とか贈与があった、といったことを言うのです。
実際に、お父さんから家を「買い取った」とか「もらった」とかいうことがあって、そこで所有者がお父さんから「私」になって、そしてはじめて「名義変更」ができるのです。
ここまで説明すると、
「買うのは無理だから、じゃあもらったことにして、手続きを・・・」
とお考えになる方もおられるようなのですが、これも簡単ではありません。
お父さんの側に実際に「贈与する」という意思が必要です。
お父さん抜きで、勝手に「もらったことにする」ことはできません。
ここまでを理解されて、
「じゃあ、父と私で贈与契約をすればいいんですね。」
とおっしゃる方も、贈与税が発生することには気がついておられないことが多いです。
それから、名義変更そのものにも「登録免許税」という税金がかかります。
これらのいろんな問題をクリアして、「贈与」を原因として名義変更をしたとしても、お父さんが亡くなった後に問題が発生するかもしれません。
もしも、お父さんに自宅以外の遺産があまりなかったとしたら、弟や妹から「お兄ちゃんは財産をもらいすぎ」ということで、紛争が勃発するかもしれません。
「父の生前に名義変更をしておけば、もう何も言われることはない。」
なんてことはないのです。
いかがでしょうか?
「不動産の名義変更」って、それほど単純なものではない、ってこと、ご理解いただけましたでしょうか。
不動産の名義の変更を検討される際には、まずは、お近くの専門家(司法書士や税理士さん)に相談してみてくださいね。
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