こんにちは。司法書士の片岡和子です。
写真は事務所近くの線路沿いの道、今朝の様子。
昨日の東京の大雪から一夜明けて、まだまだ雪が残ってます。
凍結している部分もあって、慎重に歩いて出勤しました。
さて、前回に続いて今日も遺言の話題です。
遺言は大変役に立つものだけれど万能ではない、というお話の二回目。
タイトルのとおり、不動産の名義変更についてです。
遺言書に不動産について記載しておくと、どう役立つのでしょう?
案外、ご存じない方もいらっしゃると思います。
実は、絶大な威力を発揮するのです。
例えば「妻に世田谷区○○一丁目100番1の土地を相続させる」ということを遺言書に書いておいたとしましょう。
夫が亡くなった後、妻は、この遺言書その他の必要書類を揃えて法務局へ申請すれば、土地の名義を自分に変更することが出来るのです。
(もちろん、遺言書自体は法律に則ってきちんと作成されたものでなければなりませんし、「検認」が必要になる場合もありますが。)
・・・と言われても、何が「絶大な威力」なのか、イマイチわからないですよねえ。
これ、「他の相続人のハンコがいらない」という点がキモなのです。
もしも夫婦に息子が一人いたとして、遺言書がなかったとしたらどうなるか。
夫が亡くなった後、妻と息子は「遺産分割協議」をしなければなりません。
遺産分けの話し合いですね。
「不動産と預貯金は妻が取得する、株式は長男が相続する」といったことを決めていくのです。
話し合いがまとまったら「遺産分割協議書」を作成して、それぞれがハンコを押します。
この遺産分割協議書が、不動産の名義変更の必要書類となるのです。
もうおわかりですね。
息子の協力がなければ不動産の名義を妻に変更することはできない、ってことです。
「不動産はお母さんのものにすればいいよ、ハンコは押すよ」と言ってくれればよいですが、そうとは限りませんよね。
なので「自分の死後も妻が確実に自宅に住み続けられるようにしたい」と思ったらぜひ遺言書を作成しておいてね、ということになるのです。
さて。
実はここからが今日の本題。
ぬかりなく遺言書を作成して妻に預けた、これで安心!
・・・とは言い切れない、という話なのです。
葬儀やら何やら、いろいろと済ませて一段落した妻は、不動産の名義変更の申請をしようと思い立ちます。
自分では難しいので司法書士に依頼し、遺言書等を預けます。
翌日、司法書士から驚きの電話が。
「ご依頼の不動産を調査したところ、既に名義変更がされて、あなたと他の方との共有になってます」と。
しかも「他の方」は名前を聞いたこともない赤の他人でした。
え? そんなことが?
そう、そんなことがあり得るのです。
もちろん犯人は息子。
実は、遺言書がなくても、遺産分割協議書がなくても、「法定相続分での名義変更」は出来てしまうのです。
息子は戸籍などの相続関係の書類を揃えて「妻2分の1、息子2分の1」に名義変更をします。
その後、自分の権利を他人に売ってしまった、というワケ。
(イメージしにくいかもしれませんが、不動産そのものではなく「不動産の持ち分」を売買することもできるのです。)
遺言によって不動産の全部を取得しても安心はできない、ってことなのです。
すみやかに名義変更を済ませておかなければ、こんな展開もあり得るのです。
遺言があれば安心、ではないのです。
もちろん、どこの息子もこんなワルだ、というワケではありませんから、それほど神経質になる必要もないのですが。
でも、絶対にこんなことは起きない、とも言い切れませんし。
「遺言は万能ではない」ってことをアタマの片隅に置いておいていただければ、と思います。
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