遺言は万能ではない。①葬儀の方法など

こんにちは。司法書士の片岡和子です。

今日はクリスマスイブですね。

写真は自由が丘駅前のイルミネーション。

綺麗です♪

 

さて今日は遺言のお話。

遺言については世の中に情報があふれかえっています。

私自身も「遺言を書いておきましょう!」的なことはよく言います。

でも、ちょっと気になることも。

「言い残したいことは何でも遺言書に書いておけばいいのよね? そうすれば安心なのよね?」という勘違いをする方もおられるようなのです。

まるで遺言が万能であるかのようです。

実はそうではないのです。

遺言に書いておくことで法的な強制力が生じる事柄は法律で決まっています。

たとえば「遺産分割方法の指定」。

「不動産は妻に相続させる、預貯金は長男に相続させる」といったものが典型的です。

他には「保険金受取人の指定または変更」も法的な強制力が生じます。

(保険会社は、遺言で指定された人に対して保険金を支払う法的な義務を負う、ってことです。)

では、「葬儀の方法」はどうでしょう?

あるいは、「葬儀は行わないこと」という指示はどうでしょう?

実は、これは法定の遺言事項ではないのです。

遺言書に書いておいても、法的な効力が生じるワケではないのです。

(遺言書に「葬儀や告別式は行わないこと」と書いてあったとして、遺族がこれに従わずに盛大な葬儀を執り行ったとしても義務違反ではない、ってことです。)

でも実際には、遺言書に葬儀に関することが記載されていることがあります。

これは一体何なのか?というと、「遺言者の単なる希望」ということなのです。

では全く無意味なのかというと、そういうワケでもありません。

「そういう希望なのだったら、そうしようか」となることもありますから。

法的な強制力はなくても、事実上の影響力がある、ってことですね。

でもちょっと待って。

遺言書が公正証書で作成されていて、封もされていなくて、家族の誰かが預かっていて、ご本人が亡くなってすぐに皆で読んだ、というのだったらよいでしょう。

「派手な葬儀はやるな、って遺言書に書いてあるしね。」

「そうだよね、そのとおりにしよう。」

といった展開になるかもしれません。

では、遺言書が自筆のもので封筒に入って封印がされていたら?

この遺言書を勝手に開封することはできません。

「検認の申立て」をして、家庭裁判所で開封をしなければならないのです。

手続きにはそれなりの時間がかかります。

実際にみんなが遺言書の内容を見た時には、葬儀なんてとっくの昔に終わってる・・・なんてことに。

何だかアホみたいな展開になってしまいます。

公正証書であっても、ご本人の貸金庫に入れてあって、誰も内容を知らない、なんて場合も問題です。

亡くなった方の貸金庫を開ける手続きは煩雑です。

普通は、葬儀やら何やらが終わって一段落してから銀行へ連絡をして書類を準備して・・・という流れになります。

間に合いませんよねえ・・・。

なので、「事実上の影響力」も実はアヤシイ、というのが実情なのです。

結局のところ、葬儀についての希望があるなら、遺言ではなくて、別の形で伝えておく必要がある、ってこと。

日頃のコミュニケーションが大切。

「遺言書に書いておけば従ってくれるだろう」という発想ではダメ、ってことなのですね。

もちろん、「日頃のコミュニケーションが難しいからこそ遺言に書いておく必要があるんだよ!」ということもあるでしょう。

その場合には、自分の死後すぐに遺言を読んでもらうための方策を考えておく必要があるでしょう。

 

以上、何かの参考になりましたら幸いです。

 

 

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2021年12月24日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka