遺留分侵害額請求か遺留分減殺請求か? 相続開始日によって異なります。

こんにちは。司法書士の片岡和子です。

多肉植物の葉っぱ? の間から何やらひゅるっと伸びてきました。

どうやら花が咲くようです。楽しみ~♪

 

今日は相続のお話です。

民法の改正により遺留分制度の枠組みが変わりました。

「遺留分の減殺」から「遺留分侵害額の請求」へと変わったのです。

遺留分というのは「遺言にかかわらず、一定の相続人が遺産を受けることを保証するために、法律上留保されている一定割合」のこと。

たとえば「全ての財産を愛人に与える」という遺言があったとしても、奥さんは泣き寝入りする必要はなくて、一定の割合を請求できる・・・といった制度なのです。

民法改正前は、この制度を使うためには「遺留分減殺請求」をする必要がありました。

でも、いろいろと問題があったのです。

わかりやすいように、「全財産が土地と建物だけだった」という場合を考えてみましょう。

奥さんが遺留分減殺請求をすると、土地と建物は愛人と奥さんの共有となります。

その後、愛人と奥さんは「共有となった土地・建物をどうやって分けるか」を話し合わなくてはなりませんでした。

これ、タイヘンですよね。

そこで民法を改正して、「おカネでの解決」への変更がなされたのです。

それが「遺留分侵害額請求」の仕組みです。

「権利が侵害された分をおカネで払え!」という請求をする形となったのです。

実際には、「払え!」と言ったらすぐに払ってくれた・・・なんていう展開にはならないでしょうから、家庭裁判所で調停をする、調停がうまくいかなかったら訴訟をする、という流れになっていきます。

大変であることに変わりはないのですが、「不動産が共有になる」という恐ろしく面倒な事態は避けられることになったのです。

さて、ここで気をつけなければならないことがあります。

民法の改正のうち、遺留分に関する部分は令和元年7月1日に施行されました。

令和元年7月1日以降に開始した相続については改正後の規定が適用されます。

この日以降に亡くなった方について遺留分の制度を使いたい場合には「遺留分侵害額請求」をすることになります。

でも、令和元年7月1日よりも前に開始した相続については「遺留分減殺請求」をすることになるのです。

どちらになるのかで、いろいろなことが変わってきますから、注意する必要があるのです。

遺留分の制度は難解なところが多いですから、どちらにせよ一度は専門家に相談したほうがよいかもしれませんね。

 

 

☆こちらの記事も読んでみてね☆

★遺産の一部について遺産分割協議を行うこともOK。

★遺言があっても、やっぱり争いになってしまうことはある。

★遺言は万能ではない。⑤遺言と異なる内容の遺産分割

★【相続・遺産分割】不動産の共有は時限爆弾。

★【相続・遺産分割】「不熱心」が凶器になる。

 

 

2020年4月8日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka