「法定相続分」は不変ではない。

こんにちは。司法書士の片岡和子です。

 

今日の東京は暖かくていいお天気。

クロッカスも咲きました♪

 

私は仕事で不動産の登記情報とにらめっこ。

家族4名の共有の不動産です。

共有の割合は9分の3、9分の2、9分の2、9分の2。

何だろう、この変則的な感じは。

何でこうなったのかな、と考えながらよく見ると、原因が「昭和53年○月○日相続」となってる。

そうか、相続か。

遺産分割でこうなったのかな・・・

いや違う! 法定相続だ。

配偶者が3分の1、子供たちが3分の2。

子供が3人だから、子供たちそれぞれの相続分は9分の2。

なるほど・・・。

 

ここまで読まれて???となった方もいらっしゃるのでは。

「配偶者と子供が相続人の場合の配偶者の法定相続分は2分の1。常識でしょ。違うの?」と。

実はこの場合の「2分の1」は「現在では」の話なのです。

昭和53年の時点では「3分の1」だったのです。

「2分の1」になったのは昭和56年以降です。

法律は不変ではありません。

基本中の基本である民法も、です。

時代の変化、社会の変化に法律の規定が合わなくなれば、規定の方を合わせていかなくてはなりません。

配偶者の法定相続分が増えたのは「その必要があったから」ということでしょう。

いろいろと理由はあるでしょうが、やはり大きいのは「後にのこされた配偶者の生活保障」でしょう。

「子供が親の面倒を見る」のが普通だった時代には、子供の相続分が多くても問題が起きることは少なかった。

でも、核家族化が進行したり高齢者の単独世帯が増えたりすると問題が出てきます。

こういった社会の変化は止めることができませんから、法律の方を変えていく必要があるのだ、ということですね。

ところで、昭和56年と現在とをくらべてみると、変化はとどまるところを知らず、といった感じですよね。

何といっても最大の変化は「ハンパない高齢化」でしょう。

これに何とか対応しなくては、ということで民法の相続の規定が大きく改正されました。

底流にある考え方は「配偶者に手厚く」です。

「配偶者居住権」の規定が新しく設けられるなど、「後にのこされた配偶者」への配慮がにじみ出る改正です。

でもこれ、考えてみれば「配偶者の法定相続分をさらに引き上げる」でもよかったのですよね。

複雑怪奇な「配偶者居住権」よりもシンプルに問題解決ができますから。

もちろん、そうならなかったのには、それなりの理由があるのでしょう。

でも「配偶者の法定相続分の引き上げ」は「あり得た」のです。

そうやって考えてみると、日頃から「常識」と思っているものは、実は「現在の形」でしかないのだな、と改めて感じさせられます。

 

今日はちょっと実務からは離れたお話でした。

なるほど、と思っていただければ幸いです。

 

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2019年3月5日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka