スムーズな相続のために⑧ 法定相続分どおりでなくてもOK。

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こんにちは。司法書士の片岡和子です。

事務所玄関の手拭い飾りは桜です。

よ~く見ると左下に猫ちゃんがいます。

可愛いでしょ。

東京は来週にも開花だそうですね。

またこの季節がやって来たんだなあ・・・

 

さて今日は、遺産分割協議の場面での「法定相続分」のお話です。

法定相続分という言葉は誤解を招きやすいです。

「法律で定められた相続分」ということですから、何だかとても権威があるモノのような気がするのですね。

相続について解説する書籍も、ネット上の記事も、「法定相続分」に多くのページを割いていて、それもまた、「ここは重要なんだ!」というイメージを与えます。

もちろん「法定相続分」は重要な概念です。

でも実は、スムーズに進む遺産分けの場合、「法定相続分」の出番がないことも多いのです。

内容に問題のない遺言書がある場合には、その遺言書に従うことになります。

遺言書がなかった場合には、相続人全員の話し合い(=遺産分割協議)で遺産の分け方を決めることになります。

遺産分割協議においては、法定相続分に縛られる必要はありません。

自由に決めてよいのです。(債務に関しては複雑な問題が起きることがありますが)

遺産分けは法定相続分どおりに行わなければならない、と思っている方が時々いらっしゃいますが、それは勘違いなのです。

じゃあ、「法定相続分」は何のためにあるの? ということですが、ざっくりと「モメた場合の解決の基準」である、という理解をしておけばよいと思います。

遺産分割協議がうまくいかずに決裂して、家庭裁判所で遺産分割調停を行う場合には、法定相続分を基準として調停が進められます。

法定相続分を基準として、寄与分やら特別受益やらで修正を加えて、最終的に誰が何をもらう、ということを決めていくのです。

でも、裁判所に頼らずに自分たちで決めるのなら、基準に縛られる必要はないのです。

「お父さんの遺産はお母さんが全部もらえばいいよね。」というのもアリだし、「病弱な弟の取り分を多くしようよ。」というのもアリです。

ただ、「基準」の根っこには何かしらの「考え方」があるのは事実です。

現在の法定相続分では、配偶者の相続分は常に多く設定されています。

亡くなった方の相続人が配偶者と子である場合、配偶者の法定相続分は2分の1です。

相続人が配偶者と直系尊属である場合、配偶者の法定相続分は3分の2です。(子供のいない夫婦の一方が亡くなり、亡くなった方に親または祖父母がいる場合、残された配偶者の法定相続分は3分の2、ということです。)

さらに、相続人が配偶者と兄弟姉妹である場合には、配偶者の法定相続分は4分の3です。

子や親や兄弟よりも、残された夫や妻に手厚く、という考え方が読み取れますね。

また、子が複数いる場合、各自の法定相続分は同じ、とされています。

「長男だから・・・」とか「他家に嫁に行ったのだから・・・」といったことは関係ない、という考え方です。

平成25年には、「嫡出子であるか非嫡出子であるか」も関係ない、ということになりました。考え方としては以前から有力だったのですが、正式に民法に取り入れられたのです。

遺産分割協議を行う際、法定相続分に縛られる必要はありません。

でも、法定相続分という「基準」の底に流れている「考え方」をしっかりと理解しておくことは必要なんじゃないかな、と思います。

 

 

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2018年3月15日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka