こんにちは。司法書士の片岡和子です。
事務所玄関の手拭い飾りは桜です。
よ~く見ると左下に猫ちゃんがいます。
可愛いでしょ。
東京は来週にも開花だそうですね。
またこの季節がやって来たんだなあ・・・
さて今日は、遺産分割協議の場面での「法定相続分」のお話です。
法定相続分という言葉は誤解を招きやすいです。
「法律で定められた相続分」ということですから、何だかとても権威があるモノのような気がするのですね。
相続について解説する書籍も、ネット上の記事も、「法定相続分」に多くのページを割いていて、それもまた、「ここは重要なんだ!」というイメージを与えます。
もちろん「法定相続分」は重要な概念です。
でも実は、スムーズに進む遺産分けの場合、「法定相続分」の出番がないことも多いのです。
内容に問題のない遺言書がある場合には、その遺言書に従うことになります。
遺言書がなかった場合には、相続人全員の話し合い(=遺産分割協議)で遺産の分け方を決めることになります。
遺産分割協議においては、法定相続分に縛られる必要はありません。
自由に決めてよいのです。(債務に関しては複雑な問題が起きることがありますが)
遺産分けは法定相続分どおりに行わなければならない、と思っている方が時々いらっしゃいますが、それは勘違いなのです。
じゃあ、「法定相続分」は何のためにあるの? ということですが、ざっくりと「モメた場合の解決の基準」である、という理解をしておけばよいと思います。
遺産分割協議がうまくいかずに決裂して、家庭裁判所で遺産分割調停を行う場合には、法定相続分を基準として調停が進められます。
法定相続分を基準として、寄与分やら特別受益やらで修正を加えて、最終的に誰が何をもらう、ということを決めていくのです。
でも、裁判所に頼らずに自分たちで決めるのなら、基準に縛られる必要はないのです。
「お父さんの遺産はお母さんが全部もらえばいいよね。」というのもアリだし、「病弱な弟の取り分を多くしようよ。」というのもアリです。
ただ、「基準」の根っこには何かしらの「考え方」があるのは事実です。
現在の法定相続分では、配偶者の相続分は常に多く設定されています。
亡くなった方の相続人が配偶者と子である場合、配偶者の法定相続分は2分の1です。
相続人が配偶者と直系尊属である場合、配偶者の法定相続分は3分の2です。(子供のいない夫婦の一方が亡くなり、亡くなった方に親または祖父母がいる場合、残された配偶者の法定相続分は3分の2、ということです。)
さらに、相続人が配偶者と兄弟姉妹である場合には、配偶者の法定相続分は4分の3です。
子や親や兄弟よりも、残された夫や妻に手厚く、という考え方が読み取れますね。
また、子が複数いる場合、各自の法定相続分は同じ、とされています。
「長男だから・・・」とか「他家に嫁に行ったのだから・・・」といったことは関係ない、という考え方です。
平成25年には、「嫡出子であるか非嫡出子であるか」も関係ない、ということになりました。考え方としては以前から有力だったのですが、正式に民法に取り入れられたのです。
遺産分割協議を行う際、法定相続分に縛られる必要はありません。
でも、法定相続分という「基準」の底に流れている「考え方」をしっかりと理解しておくことは必要なんじゃないかな、と思います。
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