こんにちは。司法書士の片岡和子です。
今日は成年後見のお話です。
私は、東京都世田谷区で開業して、成年後見の仕事をしています。
事例は東京家庭裁判所での扱いであることをご了解の上、お読みください。
他地域の方でも、考え方は参考になるだろうと思います。
[事案の概要]
Aは認知症で、生活全般に見守り・援助が必要な状態である。
銀行で預金をおろすこと、身の回りのものを買うことなども、既にできなくなっている。
長女B夫婦と同居して世話を受けていて、預金通帳などはBが管理している。
近い親族としては他に長男Cがいる。
さて、この状態で、Bさんは成年後見制度の利用を検討し始めました。
これまでは事実上Aさんにかわっていろいろなことをやってきたけれど、これからは、施設の利用や銀行との取引なども、正式な後見人になっておいた方がスムーズに進むと考えたからです。
そこでBさんは家庭裁判所のホームページから後見開始の審判の申立て用の書類一式をダウンロードして、書類の作成を始めました。
後見人候補者には、もちろん自分の名前を記入しました。
自分が後見人になるしかない、と考えていたので当然です。
それから、本人(この場合はAさんのことです)の親族について記入する欄があったので、Cさんの名前を書き込みました。
よく見るとその横には「親族の考え」を記入する欄があります。
親族はこの申立てについて知っているのか、
申立てをすることに賛成しているのか、
候補者(この場合はBさん)が後見人になることに賛成しているのか、
をチェックするようになっています。
BさんはCさんに電話をしました。
後見開始の申立てをすることについて、また、自分が後見人になることについて、Cさんにも了解をもらっておく必要があると思ったからです。
ところが、反応は思いがけないものでした。
「成年後見? なんでそんなものが必要なんだ! お前はおふくろの財産を自分の自由にするつもりなんだろう!」
と言われてしまったのです。
実は、長男Cさんは以前から、Bさんが母親の年金を自分たち夫婦の生活費に流用しているのではないか、と疑っていたのです。
成年後見の制度については少しは知っていましたが、母親の財産のゆくえには自分が目を光らせなければならない、後見人がどうしても必要なら自分が後見人になるべきだ、と考えていたのです。
Bさんは困ってしまいました。
でも、母親に後見制度の利用が必要だ、という考えは変わらなかったので、Cさんの賛成が得られないまま申立てをしました。
・・・こんな場合、家庭裁判所はどのような対応をするのでしょうか。
東京家庭裁判所では、近い親族(この場合にはCさん)に書面の「照会書」を送付して意向確認をしているとのことです。
そして、その結果、反対意見があれば、それを考慮して、誰を成年後見人にするのかを決定します。
この事例の場合、Cさんが反対する意向を示せば、Bさんは後見人に選任されない可能性があります。
そして、中立的な後見人として司法書士などの専門職が選ばれるかもしれません。
または、Bさんを後見人に選任した上で、同時に専門職の「後見監督人」が選任される可能性もあります。
ですから、Bさんとしては、申立てをしても自分が成年後見人になれないかもしれない、成年後見人になれたとしても、「監督人」の監督を受けることになるかもしれない、ということを理解しておく必要があります。
皆さまの中で、後見制度の利用をお考えになっている方がおられましたら、今日のお話はとても重要なことですので、ぜひ覚えておいてくださいね。
【2019年8月19日追記】
この記事は2014年4月のものです。
5年以上が経過していますので、家庭裁判所の運用の細かい部分には変更が生じています。
けれど、基本の考え方は当時と何ら変わっていないです。参考になさってください。
☆こちらの記事も読んでみてね☆
★兄弟が同意書を書いてくれない ~成年後見~ 【「親族の意見書」について追記あり】