こんにちは。世田谷区等々力の司法書士です。
いつもここで、
「事務所の最寄駅は東急大井町線の・・・」
と続けるのですが、パソコン苦手なおばさんの私は、
「老朽大井町線」
と打ち間違えてしまいました・・・。
大井町線はローカル感は溢れていますが、老朽はしていないと思います・・・。
改めて、事務所の最寄駅は東急大井町線の尾山台または九品仏です。
訴訟・裁判関係の業務、成年後見、相続登記などの仕事をしています。
中でも、成年後見に関しては、申立書の作成などだけでなく、実際に成年後見人に就任することをお引き受けしています。
お気軽にご相談くださいね。
さて、今日は成年後見等の申立てのお話です。
成年後見制度を利用しようと思ったら、家庭裁判所に申立てをします。
申立書その他の必要書類をそろえて家庭裁判所へ提出するのですが、その後、申し立てた方の気が変わる、という場合があります。
自分が後見人になるつもりでいたけれど、後見人の仕事が、イメージしていたよりもずいぶん大変らしいと知った、
自分が後見人になるつもりでいたけれど、他の人が選任される場合もあると知った、
専門家が無償で後見人になってくれると思っていたら、報酬が必要であることを知った、
など、理由は様々でしょうが、
「やっぱり成年後見制度の利用はやめたい」
ということがあるんです。
そんな時には、「申立ての取下げ」を考えることになるのですが・・・。
成年後見制度を利用するかどうかは、自由なものです。
判断能力が低下した高齢者などは必ずこの制度を利用しなければならない、というものではありません。
ですから、本来ならば、申立ての取下げも自由である、と言えます。
実際、家事事件手続法82条1項にはこう書いてあります。
「家事審判の申立ては、特別の定めがある場合を除き、審判があるまで、その全部又は一部を取り下げることができる。」
ところが、家事事件手続法121条にはこう書いてあります。
「次に掲げる申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることができない。
1 後見開始の申立て
2 ・・・(省略)
3 ・・・(省略)」
つまり、後見開始の申立てについては、自由に取下げはできず、許可が必要ということになっているんです。
なぜ、このような定めが置かれているのかというと、以前、いろいろと問題があったからのようです。
たとえば・・・
認知症のAさんは、財産の管理を自分ですることができないため、いろいろな不都合が生じていた。
そこでAさんの子であるBが後見開始の申立てをした。
Bは、自分が後見人になってAの財産の管理をするつもりだった。
しかし、家庭裁判所が他の親族に照会をすると、BがAさんの財産を自分の都合のよいように使ってしまう可能性があるとわかった。
そこで家庭裁判所は司法書士Cを成年後見人に選任することとした。
その旨をBに伝えたところ、自分が後見人になれないとわかったBは、申立てを取り下げた。
・・・こんなケースがあったようなのです。
これでは、いろいろと不都合の生じているAさんを保護することができません。
そこで、「取下げには許可が必要」ということにして、具体的な事情を考慮して、取下げを認めずに専門職を後見人に選任する、といったことができるようにしたのです。
成年後見制度を利用するかどうかは、もともと自由ではあるのですが、ご本人の保護、という公益的な側面もあるため、このようになっているのですね。
この点、とても重要なことですので、しっかりご理解いただきたいと思います。
【2019年9月9日追記】
この記事は2014年7月16日のものです。
当時、「取下げをしたいので方法を教えて欲しい」、「取下書の書き方を知りたい」といった相談が相当数あり、これはいけない、きちんと理解していただかなくては、と思って書いたのを覚えています。
現在では、そういった相談は殆どありません。
裁判所が作成する各種案内の工夫などで、「成年後見申立ての取下げには家庭裁判所の許可が必要である」ということの周知が行き届くようになったのだと思います。
できることなら、「許可が必要」という結論だけでなく、「何故そうなっているのか」ということもしっかり理解していただけるといいな、と思います。
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