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今日の話題も、検索ワードから拾ってきました。
「兄弟が同意書を書いてくれない」と検索した方の陥っている状況を想像してみると・・・
Aさんは認知症を発症して、生活にいろいろと不都合が出てきました。
不安を抱いた長男のBさんは、成年後見制度を利用しようと考えました。
自分がAさんの後見人になるつもりです。
成年後見制度を利用するには、家庭裁判所へ申し立てることが必要です。
書類がいろいろと必要になるため、Bさんは準備を始めました。
主治医に診断書を作成してもらい、親族関係図を作成し・・・
あれやこれやと必要です。
必要書類の中には「親族の同意書」がありましたので、Bさんは弟のCさんに、同意書に記入してもらおうと思ったのですが、Cさんは応じてくれません。
Bさんは困ってしまいました。
このままでは申立てができない、どうしよう・・・。
・・・こんな状況なのではないでしょうか。
結論から言いますと、同意書が添付できなくても、申立てそのものはできますし、本人(この場合はAさん)に必要があると認められれば後見開始の審判がなされます。
成年後見申立ての際の「親族の同意書」は、申立てを受けた家庭裁判所が、判断の参考にするためのものです。
親族の同意書が添付されていれば、「親族間に意見の相違はないのだな。」とわかりますので、比較的スムーズに後見開始の審判がなされる、ということ。
(意見の相違がない場合でも、必ずBさんが後見人に選任されるとは限らないことに注意。)
親族の同意書が添付されていなければ、家庭裁判所は、何らかの形で親族の意向を照会します。
その先に考えられる展開は様々です。
この事案で、家庭裁判所からCさんに照会をしたとして、Cさんの返事が「父親Aは、後見制度の利用が必要なほどのひどい認知症ではない。」というものであったとしたら、裁判所は、Aさんの判断能力について詳しい鑑定を行うかもしれません。
結果、「後見」ではなく「保佐」が開始される、という展開もありえます。
また、Cさんの返事が「後見は必要だと思うが、兄ではなく自分が後見人になりたい」というものであったとしたら、裁判所は、BさんでもCさんでもない、第三者の専門職を後見人に選任するかもしれません。
つまり、親族の同意書が添付されていようがいまいが、後見を開始するかどうか、誰を後見人にするのかは、最終的には家庭裁判所が決定するのです。
申立人の立場は、「成年後見制度利用のきっかけを作る人」なのだと考えておくとよいです。
その後の展開についてコントロールできる立場ではないのです。
この点を十分に理解をした上で申立てをすることが必要です。
【2021年5月28日追記】
この記事は2015年に書いたものです。
「親族の同意書」は、現在、東京家庭裁判所では「親族の意見書」になっています。
この他にも、いろいろと運用に変化があるかもしれません。
成年後見の申立てを検討されている方は、必ず最新の情報を確認するようにしてください。
東京家庭裁判所の場合は「後見サイト」に必要な情報がまとめられています。
その他の家庭裁判所でもホームページ等で情報の提供がなされていると思います。
この記事の内容は参考になる部分も多いと思いますので、そのまま残してあります。
最新の情報ではないことに十分ご留意の上、参考になさってください。
【2021年9月17日追記】
本文中の「家庭裁判所は、何らかの形で親族の意向を照会します」について。
現在、東京家庭裁判所では、親族の意見の照会を行わない場合もあるようです。
(最近のことなのか、実は以前からそうだったのかはわかりません。)
照会を行わないのはどんな場合なのか、何か基準があるのか・・・それは不明ですが。
おそらく「親族の意見を確認しないまま進めても問題が起きる可能性が低い場合」だろうな、と思います。
例えば「ずっと疎遠で全く付き合いのない95歳の兄」みたいな。
「そんな方の意見の確認に時間を使うより、ご本人のために早く後見開始の審判をしなくては」という判断もアリ、といった感じかなあ、と思います。
☆こちらの記事も読んでみてね☆
★成年後見制度の利用を完全に確実に回避する方法は・・・ない。