こんにちは。司法書士の片岡和子です。
今日の東京は何と雪が降ってます。
お花見どころじゃないですねえ。
写真はサフィニアです。
冬越しした株から切り取って、ちっちゃな薬びんに挿してます。
うまく根っこが出たら鉢植えにするつもり。
なぜ最初から土に挿し芽をしないかというと、根っこが出てくるのを観察するのが好きだから。
楽しみです!
さて、今日も相続のお話です。
亡くなった方が遺言をしていた場合、その遺言に従って進めていくことになります。
ところが、
「遺言の内容に納得できない!」
という事態が生じることがあります。
例えば、父親が亡くなって、相続人は息子が二人、という場合に
「すべての遺産を長男に相続させる」
という遺言がなされていたとしましょう。
何も残してもらえなかった二男は、さぞかしショックを受けることでしょう。
では、この二男はどう対応すればよいのでしょう。
ネットで検索すると、「遺留分」やら「遺留分減殺請求」といった言葉に行き当たることでしょう。
いろいろと調べた二男は
「自分には権利がある。それを主張する法的手段もある!」
と考えるだろうと思います。
でも、ちょっと立ち止まって、じっくり考えてみていただきたいのです。
亡くなった方がそのような遺言をしたのには何かしら理由があるはずなのです。
そこに思いを巡らせてみていただきたいのです。
長男は自分の夢を捨てて家業を継いだのかもしれません。
一方の二男は自由にさせてもらって、留学費用まで出してもらったのかもしれません。
亡くなった方は、遺産を全て渡すことで長男に埋め合わせをしたかったのかもしれません。
あるいは、長男には難病の子がいるのかもしれません。
二男は独り身で、収入も十分あるのかもしれません。
亡くなった方は、自分の遺産を孫の療養費に充てて欲しかったのかもしれません。
実際の遺言には、そういった理由や事情が記載されていることも多いのです。
でも、亡くなった方は、
「わざわざ説明しなくても二男はわかってくれている」
と思って、何も書かなかったのかもしれません。
そうやって思いを巡らせてみると、
「ああ、そういうことか」
と納得できる場合もあるのではないかと思います。
時には、他の相続人も、納得できないと感じている場合もあるでしょう。
この例でいえば、長男も
「すべてを自分に、って何だか変だよなあ。
自分も弟も同じように育って、同じような援助を受けたんだし。
もしかしたら、ちょっと認知症が始まっていて、きちんとした判断ができなかったのかも・・・」
と感じている、といった場合です。
そんな場合には、
「遺言のとおりにはしない。」
という選択肢があります。
相続人全員が同意をすれば、遺言の内容と異なる遺産分割をすることもOKなのです。
長男と二男は、
「せっかくの遺言だけど、二人とも納得できないよね。
遺産は二人で等分に分けることにしよう。」
と決めてもよいのです。
もちろん、二男は納得できないけれど、長男は
「遺言があるんだから、そのとおりにするのが当然だろう」
と譲らない、という場合もあります。
その場合には「遺留分」の出番になります。
遺留分とは、相続人に保証されている最低限の取り分のことです。
保証されているのは、法定相続分よりも小さい割合です。
どうしても、ということであれば、この遺留分を主張することになります。
その主張の方法が「遺留分減殺請求」です。
二男は長男に対して遺留分減殺請求をします。
その上で、遺留分を考慮した分割の話し合いを行います。
話し合いがまとまらないようであれば、調停、訴訟と進めていくことになります。
遺留分減殺請求には、行使できる期限がありますし、調停や訴訟となると、一般の方には対応が難しいと思います。
遺留分の主張をする場合には、弁護士さんに依頼した方がよいと思います。
もちろん費用はかかります。
でも、生兵法は怪我のもとです。
あやふやな知識で、自分で対応しようとすると、結局のところ、よくない結果になる可能性があります。
以上、参考になりましたら幸いです。
【2020年10月24日追記】
民法が改正されて「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」となりました。
でも、基本の考え方は変わっていませんので、この記事はそのまま残してあります。
どうぞ参考になさってください。
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★スムーズな相続のために⑤ 自筆の遺言を預かっている場合の対応