こんにちは。司法書士の片岡和子です。
豪華大輪パンジーがあっち向いて咲いてます・・・
普通の鉢植えだったら、くるりと回してこっち向けるのだけど、ハンギング鉢で固定なので・・・
ま、後ろ姿もキレイです♪
今日は久しぶりの「超入門」。
素材は「遺言」です。
「『動画で遺言』は有効なのか?」と聞かれると、「有効でもいいんじゃない?」と感じる方もいらっしゃると思います。
なので、設問を変えてみましょう。
「銀行へ『動画の遺言』を持ち込んだら相続の手続きをしてもらえるか?」
いかがでしょう?
おなたのお父さんが亡くなった。
お父さんはビデオレターみたいな動画を残していて、そこには「○○銀行の預金は全部長男の□□にあげる」というメッセージが。
長男□□であるあなたがこの動画を○○銀行へ持って行き
「父が残したメッセージです。これが父の遺志です。父の預金は全て私のものですから手続きしてください」
と言ったとしたら・・・
銀行員の立場で考えてみてください。
言われるままに解約手続きをして全額を長男の口座へ送金・・・なんてこと、出来るはずがありませんよね。
何故って?
理由はいろいろと考えられますが、何といっても「動画は簡単に編集できるでしょ」ということ。
都合のいい部分だけを切り取る、とか。
編集が出来てしまう、ということは「本当に本人の意思かどうかわからない、他の人間の意図が加わっているかもしれない」ということ。
そんなモノで相続の手続きができてしまったら大変なことになってしまいます。
・・・と考えてみると、遺言の形式が民法で厳格に決まっていることに納得できるのではないでしょうか。
例えば自筆証書遺言の場合。
「全文を自書」が基本です。
パソコンで作成した本文の末尾に署名・押印、といったスタイルではダメなのです。
他の人間が作成したものに名前を書かされた、なんてことも考えられますから。
訂正をする場合も、やり方がきちんと決まっています。
二重線で消して横に書き直し、ではダメ。
他の人間があとから手を加えた、なんてことも考えられますから。
遺言が手続きに使われるのは、遺言者が亡くなったあとのこと。
遺言書を持ち込まれた銀行などでは、ご本人に対して「この内容でお間違いありませんね。」と確認することは出来ないのです。
ご本人はそこにはおらず、「遺言書」という紙だけがそこにあるのです。
厳格な形式が求められるのはアタリマエ、ですよね。
さて。
ここまでの話は「有効」の意味を「実際に相続の手続きに使えるかどうか」と考えた場合のことです。
「有効」を「何かしら役に立つ」という意味にとらえると、また話が違ってきます。
亡くなったお父さんがビデオレターを残していて、遺産の分け方についてのメッセージがあったとしましょう。
残された相続人たちは「お父さんの言うとおりにしようね」と話がまとまるかもしれません。
「法律上の効力はないけれど、事実上の遺言として役に立った」と言えますよね。
もっとも、このような場面でも「オマエが自分の都合のいいように編集しただろう!」というケンカになることも考えられますが。
いかがでしょう。
なるほど、と思っていただけましたら幸いです。
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