こんにちは。司法書士の片岡和子です。
東急大井町線の尾山台と九品仏の中間地点あたりで開業してます。
二子玉川や自由が丘からも便利なところです。
今日は強制執行のお話。
強制執行っていう言葉、耳にしたことはあるけど、経験したこともないし、イメージできない、という方が多いでしょう。
まずは、法律用語辞典に載っている説明から。
「私法上の請求権を国家権力によって強制的に実現する手続」
と書いてあります。
抽象的・一般的な表現ですねえ。
でも、これは仕方がありません。
実際の強制執行にはいろんな形があって、バリエーションに富んでいるので、まとめると、こういう表現をするしかないんです。
なので、わかりやすくするために、例をひとつだけ挙げてみましょう。
「貸したお金を、裁判所の力を使って相手の銀行預金から直接取り立てる。」
これが、強制執行のひとつの形です。
具体的には、裁判所に申立てをして、「差押命令」を出してもらいます。
この「差押命令」が出されると、相手は、差し押さえられた預金を引き出せなくなります。
そして、あなたは、その預金の中から、貸した分のお金をもらうことになります。
(実際には、あれこれと面倒な手続きはあるのですが、ざっくりとした理解をしていただくために、単純化しています。)
こうやって、権利を実現するのが強制執行なんです。
ところで、裁判所に「差押命令」を出してもらうには
「貸したお金を返してもらう権利があって、強制執行ができる」
ということを示す文書を提出しなければなりません。
この文書のことを「債務名義」といいます。
(わかりにくい言葉ですねえ。でも、重要な言葉なので、頑張って覚えてくださいね。)
つまり、強制執行をするためには、その前提として「債務名義」が必要なんです。
そして、「債務名義」にもいろいろな種類があるのですが、ひとつだけ例をあげてみましょう。
「判決」です。
「判決」という言葉はお聞きになったことがあるでしょう?
「知人にお金を貸したのに返さないから訴えたら勝訴したよ。」
といった場合の、その裁判所の出した結論のこと、と理解してもらえればOKです。
この「判決」をもらってはじめて「強制執行」ができるんです。
ここまでをまとめてみましょう。
「貸したお金を国家権力によって強制的に返してもらう」ためには二段階の手続きが必要になる、ということです。
「債務名義を取得する」と「強制執行する」です。
私たちが日頃「訴えてやる!」とか「裁判する!」という場合、実は、この二段階の手続きのうちの一段階目のことを言っているんです。
いかがですか?
ちょっとイメージ出来てきましたでしょうか。
こんなふうに考えると、
「勝訴したのに、結局お金は戻ってこなかったよ・・・」
なんていう事態が、具体的にはどういうことなのか、わかりやすいですよね。
つまり、一段階目はうまくいったけど二段階目はうまくいかなかった、ということなんですね。
(銀行預金に対して強制執行したけど残高がゼロだった、とか。)
「訴えてやる!」となった時には、ぜひ、この「二段階目」についても検討してみてくださいね。
実際にお金が取り返せる見込みがないのなら、訴えても意味がないかもしれない・・・、ということですので。
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