強制執行とは

DSC01645

こんにちは。司法書士の片岡和子です。

東急大井町線の尾山台と九品仏の中間地点あたりで開業してます。

二子玉川や自由が丘からも便利なところです。

 

今日は強制執行のお話。

強制執行っていう言葉、耳にしたことはあるけど、経験したこともないし、イメージできない、という方が多いでしょう。

まずは、法律用語辞典に載っている説明から。

「私法上の請求権を国家権力によって強制的に実現する手続」

と書いてあります。

抽象的・一般的な表現ですねえ。

でも、これは仕方がありません。

実際の強制執行にはいろんな形があって、バリエーションに富んでいるので、まとめると、こういう表現をするしかないんです。

なので、わかりやすくするために、例をひとつだけ挙げてみましょう。

「貸したお金を、裁判所の力を使って相手の銀行預金から直接取り立てる。」

これが、強制執行のひとつの形です。

具体的には、裁判所に申立てをして、「差押命令」を出してもらいます。

この「差押命令」が出されると、相手は、差し押さえられた預金を引き出せなくなります。

そして、あなたは、その預金の中から、貸した分のお金をもらうことになります。

(実際には、あれこれと面倒な手続きはあるのですが、ざっくりとした理解をしていただくために、単純化しています。)

こうやって、権利を実現するのが強制執行なんです。

ところで、裁判所に「差押命令」を出してもらうには

「貸したお金を返してもらう権利があって、強制執行ができる」

ということを示す文書を提出しなければなりません。

この文書のことを「債務名義」といいます。

(わかりにくい言葉ですねえ。でも、重要な言葉なので、頑張って覚えてくださいね。)

つまり、強制執行をするためには、その前提として「債務名義」が必要なんです。

そして、「債務名義」にもいろいろな種類があるのですが、ひとつだけ例をあげてみましょう。

「判決」です。

「判決」という言葉はお聞きになったことがあるでしょう?

「知人にお金を貸したのに返さないから訴えたら勝訴したよ。」

といった場合の、その裁判所の出した結論のこと、と理解してもらえればOKです。

この「判決」をもらってはじめて「強制執行」ができるんです。

ここまでをまとめてみましょう。

「貸したお金を国家権力によって強制的に返してもらう」ためには二段階の手続きが必要になる、ということです。

「債務名義を取得する」と「強制執行する」です。

私たちが日頃「訴えてやる!」とか「裁判する!」という場合、実は、この二段階の手続きのうちの一段階目のことを言っているんです。

いかがですか?

ちょっとイメージ出来てきましたでしょうか。

こんなふうに考えると、

「勝訴したのに、結局お金は戻ってこなかったよ・・・」

なんていう事態が、具体的にはどういうことなのか、わかりやすいですよね。

つまり、一段階目はうまくいったけど二段階目はうまくいかなかった、ということなんですね。

(銀行預金に対して強制執行したけど残高がゼロだった、とか。)

「訴えてやる!」となった時には、ぜひ、この「二段階目」についても検討してみてくださいね。

実際にお金が取り返せる見込みがないのなら、訴えても意味がないかもしれない・・・、ということですので。

 

 

☆こちらの記事も読んでみてね☆

★「お金がないから返せない」は最強です。

★訴訟は、債務名義を取得するための方法のうちの一つである。

★債務名義としての公正証書には執行認諾約款が必要

★建物明渡の強制執行は公正証書ではできない。

★法律用語をわかりやすく。①強行規定(強行法規)