成年後見人の財産管理は「守り」が基本

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こんにちは。世田谷区の司法書士です。

東急大井町線の尾山台駅から徒歩5分くらいのところで開業してます。

 

今日は、ご親族の成年後見人になろうと考えておられる方向けのお話です。

中でも、「積極的」に財産管理をしようという意欲をお持ちの方。

実は、家庭裁判所の監督下に置かれる成年後見制度では、ご本人の財産の「積極的運用」は認められていません。

原状維持が原則です。

出費をなるべく減らして、財産が減少しないようにすべし、という意味ではありません。

被後見人のために必要な費用の支出は、もちろん認められます。

認められないのは、株式への投資や、相続税対策のあれこれ、などです。

ご本人が投資や節税に積極的ではなかった場合で、その息子さんなどが積極派であった場合、成年後見制度の利用をきっかけにして、投資や節税に乗り出そうとお考えになる場合があるようです。

これまで、親の意識の低さにやきもきしていたのを、これからは自分がおおいに腕を振るうぞ、というワケですね。

でも、これは認められません。

判断能力が低下して成年後見制度を利用するようになったら、その時点での状況を維持していく、増やすことは考えない、というのが基本の考え方です。

いわば「守り」の管理です。

専門職の後見人がつく場合も同じです。

運用の上手な専門家に後見人になってもらえばうまく運用してくれる、なんてことはありません。

成年後見における財産管理は「静的管理」です。

判断能力の低下したご本人が、これまで同様の生活ができるように収入・支出を管理する。

普段はそれ以上のことはしません。

預金が底をつきそうになった、とか施設入所に資金が必要、といった場合には不動産などを売却することもありますが、

「今は高値だから売り時!」

といった発想はしないことになっています。

この考え方については、是非を問うよりも、「現状では成年後見制度の運用はこうなっている」ということを、そのまま受け入れていただく必要があると思います。

その上で、成年後見制度をご利用いただく必要があります。

もしも、このことに納得がいかないのであれば、成年後見制度の利用自体を避けていただく方がよいでしょう。

「おやじの判断能力が落ちて、財産の適切な運用ができなくなったからこそ成年後見制度を利用しようって言ってるんだ! おやじの財産を活用して何が悪い! 何で投資や節税がダメなんだ!」

という声が聞こえてきそうですが・・・。

そもそも、ご本人の財産はご本人のものなんです。

お子さんたちなどの相続人のものではありません。

ご本人が何かしら積極的な運用をしようと考えておられたなら、判断能力が低下する前に、そうされていたことでしょう。

積極的な活用はしない、というのがご本人の意思であると言えるのです。

 

さて、ここまでお話してきたことは、私が専門職であるから知っていること、というわけではありません。

東京家庭裁判所では成年後見の申立てをする際には「成年後見申立ての手引」が渡されますが、ここに、きちんと書かれていることなのです。

他の家庭裁判所でも、おそらく同様のものが配布されていると思います。

成年後見の申立てを検討される際には、この「手引」を、ぜひぜひお読みください。

隅から隅まで、熟読していただきたいです。

そうすれば、あとになって「こんなはずじゃなかった!」といった事態は、かなりの程度、避けられるのではないかと思っています。

 

【2019年9月4日追記】

この記事は2014年6月に書いたものです。

基本の考え方は今でも変わっていないです。

現在、東京家庭裁判所では「成年後見人・保佐人・補助人ハンドブック(Q&A付き)」というものを出しています。

後半部分のQ&Aで、財産管理について詳しく解説されています。

東京家庭裁判所の「後見サイト」から誰でも入手できます。

親族の後見開始申立てをお考えの方は、まずこのQ&Aを通読することをお勧めします。

 

 

☆こちらの記事も読んでみてね☆

★成年後見制度を利用しない、という選択肢もある。

★成年後見制度は相続争いと結びついてしまうこともある。

★成年後見人はなぜ相続税対策ができないのか

★成年後見制度の利用を完全に確実に回避する方法は・・・ない。

 

 

2014年6月25日 | カテゴリー : 成年後見 | 投稿者 : Kazuko Kataoka