保佐人にはもれなく同意権がついてくる。アタリマエなので登記事項証明書には記載されない。

こんにちは。司法書士の片岡和子です。

玄関の手ぬぐい飾り掛け替えました。

桜からハナミズキへ。

季節が進むの、ホントにはやいですねぇ。

私はこのところ、新たに保佐人に就任した案件について、あちこちへ届出に回っています。

金融機関やら年金事務所やら。

郵便局へも行きました。

ゆうちょ銀行の口座の手続きです。

成年後見関連の手続きに出向く時は、いつも十分な時間を確保しておきます。

スムーズに処理が進んだ場合でもかなりの時間がかかるのです。

そして、スムーズにいかないことがまた多いのです。。。

他の金融機関だと、あらかじめ連絡をして、場合によっては予約をしたり、ということが多いです。

必要書類等も準備をしておいてくださり、手続きに詳しい職員さんが対応してくださることが多いです。

ゆうちょ銀行も予約システムがあるようですが、私はまだ使ったことはないです。

自分の時間のある時に最寄りの郵便局へ出向く、というスタイル。

たまたま窓口で対応した職員さんが苦労する、という展開になります。

窓口の向こうでマニュアルと格闘する職員さんを見ながら、ごめんね面倒なの持ち込んで、なんて思ったりする私です。

(向こうからしたら、怖いオバサンが「はよせんか、こら!」と睨んでる・・・なのかも。)

今回も、窓口の向こうで複数の職員さんが、あーだこーだと言い合ってました。

「保佐人だから同意権が・・・いや代理権が・・・」みたいな会話が聞こえてきます。

しばらくして窓口へ呼ばれて、職員さんが「あのぉ・・・」と。

「この登記事項証明書には代理行為目録がついていて、これで代理権があることはわかります。でも同意権については何も載っていないです。この案件では代理権はあるけれど同意権はない、ってことなんでしょうか?」

あ、そこかあ、と思う私。

で、説明をしたのだけどイマイチうまく伝わらなかったようで、職員さんはあやふやな表情。

う~ん、私の説明が下手だったかなあ・・・と落ち込んでしまいました。

手続き自体は問題なく完了して、保佐人の登録ができました。

でも、うまく説明できなかったことが悔しくて、リベンジのためにこうやってブログを書いている次第。

・・・前置きが長くなってしまいました。

ここからが今日のメインのお話です。

保佐人にはもれなく同意権がついてくるのです。

というより、「同意権を使って本人を守るのが保佐人である」という方が正確かもしれません。

判断能力が著しく不十分な人を守るのが「保佐」の制度です。

支援者として「保佐人」が選任されます。

注目していただきたいのは「著しく不十分」という点。

あくまでも「不十分」なのであって、「自分では判断できない」のではありません。

法律行為も「自分で行う」のが基本。

でも、それではマズいことが起こってしまうかもしれない。

なので、「重要な行為をするには保佐人の同意を得なければならない」ということにしたのです。

そして、「同意を得ないで行った行為は取り消すことができる」ことにしたのです。

ご本人が行う行為を保佐人がチェックし、保佐人が大丈夫だと判断すれば同意をする。

ご本人が保佐人の同意を得ないまま重要な行為を行った場合は、後から取り消せばいい。

・・・こうやって保佐人は本人を支援するのです。

この保佐人の権限を「同意権」と呼んでいるのです。

でも、「なんでもかんでも保佐人の同意が必要」というワケではありません。

何から何まで保佐人の同意が必要、なんてことになったら大変です。

ご本人はまるで監視されているような生活になってしまいます。

そこで、保佐人の同意権の範囲が決められています。

民法13条1項に列挙されています。

ここで登記事項証明書の話に戻りましょう。

郵便局の職員さんの疑問は「登記事項証明書からは保佐人に同意権があるのかどうかわからない」ということでした。

これに対する答えは「保佐人に選任されているということは、同意権が与えられている、ということ。当然のことなので登記事項証明書には記載されない。」ということになります。

さらに、「保佐人に自動的に与えられた同意権の範囲は、民法13条を見ればわかることなので、これについても記載されない」ということです。

さて。

もしかしたら、職員さんの疑問は、以前に「同意行為目録」を目にしたことがあったからかもしれません。

実は、民法13条で規定されている範囲以上の同意権が与えられる場合があるのです。

ご本人へのより広い支援が必要な場合です。

この場合には、登記事項証明書に「同意行為目録」がくっつけられます。

与えられる同意権は案件によって異なりますので、その内容をわかるようにしておく必要があるからです。

もしも登記事項証明書に「同意行為目録」がくっついていたら、その保佐人に与えられた同意権の範囲は「民法13条に書いてあるもの+目録に記載されているもの」ということになりますね。

いかがでしょう。

ご納得いただけましたでしょうか。

では、ここでちょっと余談です。

保佐の登記事項証明書に「代理行為目録」がくっついていることがあります。

というか、くっついていることが殆どだと思います。

保佐人にはもれなく同意権がついてきますが、代理権は当然にはついてきません。

必要であれば代理権を付与してもらえる、ということになっています。

実際には、何らかの代理権を付与してもらうことが圧倒的に多いです。

「必要であれば」ということですが、「必要である」ことが殆どだからです。

同意権の行使だけでは保佐人としての活動が十分に行えないことが多いのです。

代理権を与えてもらい、保佐人がご本人の代わりに法律行為を行うことで、より手厚い支援が可能になります。

この代理権も、案件によって範囲が異なりますから、内容がきちんとわかるようにしておく必要があります。

そこで、保佐人に代理権が与えられた場合には必ず「代理行為目録」が作成されます。

金融機関の職員さんなどからすれば、「保佐の登記事項証明書には必ず代理行為目録がくっついている」という印象になるでしょう。

ホントは「代理行為目録のない登記事項証明書」もあり得るのですけど。

いかがでしょう。

なるほど、と思っていただけましたら幸いです。

 

 

☆こちらの記事も読んでみてね☆

★勝手に深読み・民法876条の4第1項【保佐人の代理権】付与「できる」がポイント。

★勝手に深読み【民法876条の4第2項】保佐人は純粋な「法定代理人」なのか?

★勝手に深読み【民法13条第1項10号】被補助人=制限行為能力者ではない。

★成年後見制度を利用しない、という選択肢もある。

 

 

2021年4月15日 | カテゴリー : 成年後見 | 投稿者 : Kazuko Kataoka