こんにちは。司法書士の片岡和子です。
写真はネジバナ。可愛らしいでしょ♪
もっと高性能のカメラで撮ると繊細な美しさがよくわかると思うのだけど、私のスマホではこれが限界。
伝えきれなくて、ちょっと残念。
さて、今日の話題は「保佐人の代理権」です。
5月16日に同じ条文の第1項を取り上げた記事を書いていて、今日はその続編。
できましたら前の記事を読んでみてくださいませ。
こちらです↓↓↓
勝手に深読み・民法876条の4第1項【保佐人の代理権】付与「できる」がポイント。
保佐人の基本の任務は「重要な行為への同意と取り消し」。
これに加えて「一定の代理権」を与えられる場合もあるけれど、そうじゃない場合もある。
実は「代理権の与えられていない保佐人」も存在する。
・・・というお話でした。
で、今日は「保佐人に代理権を与えるには本人の同意が必要」というお話です。
何はともあれ条文を。第1項も含めます。
【民法第876条の4】
①家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
②本人以外の者の請求によって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
第1項は「必要があれば保佐人に一定の代理権を与えることができる」という内容です。
代理権を与えるのは家庭裁判所。
家庭裁判所に代理権付与の請求をできる者は限定されています。
ご本人、配偶者、四親等内の親族など。
実際に代理権付与の請求をするのは「ご本人を守るためには代理権が必要であると考えた人」です。
ご本人自身であることは少ないと思います。
ご本人の判断力の低下で様々な問題が起きて、「何とかしなければ!」と動き出すのは大抵周囲の方々です。
ここに問題が起きてきます。
ご本人は判断力が低下しているのですが、全く判断力がないワケではない。
「保佐」に該当する方は、難しいことはわからなくなっていても、ある程度の判断力はお持ちなのです。
ですから、いくら周囲が「強力なサポートが必要だから保佐人に代理権を!」と考えても、ご本人の意向を無視して代理権を付与することはできないのです。
それを規定したのが第2項なのです。
改めて読んでみてください。
「本人の同意がなければならない」と書いてありますね。
ご本人が嫌だというのを無視して保佐人に代理権が与えられる、なんてことはないのです。
さて、ここからが今日の深読みポイントです。
代理権を付与された保佐人は「法定代理人である」ということになっています。
法定代理人とは「法律の規定により代理権を与えられた代理人」のことです。
代理権を付与された保佐人は「民法876条の4第1項により代理権を与えられた代理人」ということになりますね。
でも・・・ちょっと引っかかりますよね。
私の手元の法律用語辞典で「法定代理人」を引くと、「民法上、代理権が本人の意思に基づかないで、直接法律の規定によって与えられる代理人をいう。」と書いてあります。
引っかかるのは「本人の意思に基づかないで」の部分です。
保佐人に代理権を付与するには本人の同意が必要なのだから、「本人の意思」が反映されているワケですよね。
これって「法定代理人」と呼んでいいんだろうか? という疑問がわいてきます。
結論から言うと、民法は、代理権を付与された保佐人を「法定代理人」と呼んでいます。
難しいことは省略しますが、民法13条第1項10号をよ~く読むとわかります。
でも私は、代理権の付与された保佐人を「法定代理人」と呼ぶのにはためらいがあります。
「純粋な法定代理人」とは言い切れない要素があるのですし、まさにその部分が重要だ、と考えているのです。
実際に私が保佐人として代理権を行使する場合には、いつもとても慎重になります。
「法律の規定による代理権」という性格よりも、「ご本人の同意を得て与えられた代理権」という性格の方が重いものがある、と感じているのです。
さて。
ここからはオマケのお話です。
「本人の同意」をどうやって確認するのか、というお話。
これは家庭裁判所の調査官さんの仕事になります。
ご本人と面談をして、お気持ち・意向を確認するのです。
ご本人が家庭裁判所へ出向くのが難しい場合、調査官さんの方からご自宅や入所先へ来てくださいます。
私も同席することがあるのですが、調査官の皆さんは対話が上手です。
勉強になることが多いです。
我々法律職は、つい専門用語をそのまま使ってしまったりしがち。
気をつけなくちゃ、見習わなくちゃ、と思います。
・・・と言いつつ、今日のお話も少々理屈っぽくてわかりにくかったかも、です。。。
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★勝手に深読み・民法876条の4第1項【保佐人の代理権】付与「できる」がポイント。
★保佐人にはもれなく同意権がついてくる。アタリマエなので登記事項証明書には記載されない。
★成年後見制度の利用を完全に確実に回避する方法は・・・ない。