こんにちは。司法書士の片岡和子です。
母の日にもらったフラワーアレンジメントの中から、ちょっと弱ってきたバラを取り出してドライにしてみました。
いい感じになってます♪
さて、今日のお話は「保佐人の代理権」。
世の中では「成年後見人は広範囲な代理権を持つ。それに比べて保佐人の代理権は範囲が限られている。」という説明がなされることがあります。
「だから保佐人の代理権については登記事項証明書でよくよく確認しなければならない」みたいに。
間違ってはいないのですが、実は正確ではないのです。
このような説明を聞くと「保佐人には(範囲は狭いが)必ず何らかの代理権が与えられている」という感じがしてしまいます。
でも違うのです。
「代理権の与えられていない保佐人」も存在するのです。
条文を読んでみましょう。
民法876条の4第1項です。
頑張ってお付き合いください。
【民法第876条の4】① 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
前半は煩雑なので無視しましょう。
後半、被保佐人のために~ をじっくり読んでみてください。
深読みポイントは最後の「できる」です。
家庭裁判所は保佐人に何らかの代理権を与えることが「できる」のです。
「与えることができる」のですから、つまり、「与えなくてもよい」ということ。
そうなの? と思われた方もいらっしゃるでしょう。
そうなのです。
じゃあ、「代理権が与えられていない保佐人って何をするの?」という疑問が湧いてきますよね。
実は、保佐人の基本の任務は「重要な行為への同意と取り消し」なのです。
民法13条に規定されています。
被保佐人が民法13条に列挙された行為をするには保佐人の同意を得なければならない、同意を得ないで行った行為は取り消すことができる、となっているのです。
これが保佐人の基本の任務。
「同意権と取消権」を使って被保佐人を守るのです。
「13条」という、民法のホントに前の方に書かれているのですから、まさに「超基本」。
行為を行うのはご本人(被保佐人)で、保佐人はあくまでもサポート役、というイメージです。
この基本の任務にプラスして「特定の法律行為を代理する」という任務が与えられる場合もある、ってことなのです。
それを規定しているのが876条の4第1項なのです。
ご本人の代わりに(代理して)法律行為を行うワケですから、「サポート役」からは一歩踏み込んだ役目を持つ、ということになります。
世の中の一般的な理解は、「基本」と「プラスアルファ」がひっくり返ってしまっている、という気がします。
「プラスアルファ」が、まるで「基本」みたいな大きな顔をしてるのです。
なぜそうなるのかというと、やはり「保佐」の制度の実際の使われ方がそうなっているから、でしょう。
「ご本人をサポートする」よりも「代わりにやっちゃう」方がラクだから・・・だと思います。
それが悪いことなのか、というと、そう簡単に答えが出せる問題ではないです。
「保佐」という制度がカバーする範囲は大変に広く、現実に代理権が必要なケースが大変多く・・・
あ、これについて書き始めると際限がなくなってしまいます。
今日はこの辺で終わりとしましょう。
☆こちらの記事も読んでみてね☆
★勝手に深読み【民法876条の4第2項】保佐人は純粋な「法定代理人」なのか?
★勝手に深読み【民法13条第1項10号】被補助人=制限行為能力者ではない。
★保佐人にはもれなく同意権がついてくる。アタリマエなので登記事項証明書には記載されない。