こんにちは。司法書士の片岡和子です。
写真はガーデンシクラメン。
冬のイメージがあるけれど、まだまだこれから、な感じで咲いてます♪
2回夏越しをした、3年目の株なのです。
お店で買ってきた1年目の株とは開花時期がずれるようです。
自然な成長をしてる、ってことなのでしょう。
さて、今日の話題は民法728条2項。
ネット上では「死後離婚」として語られていることも多いようです。
ただし、「死後離婚」は法律用語ではありません。
私は、初めてこの言葉を目にした時、何のことだか全くわかりませんでした。
何それ、「死後に離婚」はありえないでしょ、論理矛盾でしょ、という感じで。
「配偶者死亡後の姻族関係の終了」のことを言っているのだとわかった時は、へえぇ~、でした。
うまくない表現だなあ。
あ、この感じ方は、私が法律専門職だからなのかな?
一般的には受け入れやすい表現なのかな?
何はともあれ、条文を見てみましょう。
理解の助けになるよう、728条1項から。
民法第728条
①姻族関係は、離婚によって終了する。
②夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
第1項は難しくないですね。
離婚したら姻族関係が終了する、と言ってます。
「姻族」とは、婚姻によってできた親戚のこと。
「夫の父」とか「弟の妻」とか。
代表格が、いわゆる舅・姑・小姑。
とたんにイメージしやすくなりましたね。
ここから先は、舅でも姑でも、とにかく「縁を切りたい相手」をイメージしながら読み進んでくださいませ。
話を戻します。
離婚したら姻族関係が終わる・・・アタリマエですよね。
では、配偶者が死亡したら?
何もしなければ、姻族関係は終了しません。
夫や妻が亡くなっても、その父母やきょうだいとの法律上の関係は終わらないのです。
それで特に問題ないことも多いでしょうけど、「終わらせたい!」ってこともありますよね。
そんなこと出来るの? 出来るんです。
・・・というのが民法728条2項なのです。
改めてじっくりと条文を読んでみてくださいませ。
夫婦の片方が亡くなった場合、残された側が「姻族関係を終了する」という意思表示をすれば、舅・姑などとの法律上の関係が終わる、と言っているのです。
法律上の関係が終わる、というのは法律上の権利や義務を負わなくなる、ということ。
互助の義務とか扶養義務とか。
(あ、姻族間では必ず互助の義務や扶養義務がある、というワケではないです。場合によるのです。念のため。)
姻族関係を終了させる意思表示って、具体的にどうするのかというと、戸籍の届出をするのです。
「姻族関係終了届」といいます。
舅や姑に向かって「姻族関係を終了します」と宣言するとか、通知するとかの必要はないのです。
黙って届出をすればいいだけ。
「姻族関係を終わらせる」という選択ができるのは、配偶者を亡くした側だけです。
舅や姑の側から、亡くなった息子の妻と法律上の関係を終わらせる、なんてことは出来ません。
民法は「夫が死んでも舅や姑に仕えるべし」なんて、これっぽっちも考えていないのですねえ。
実際にこの規定を使って姻族関係を終了させることが簡単だとは思いません。
お墓はどうなるの? とか。
法事はどうするの? とか。
いろいろと考えると、踏み切れない方が多いだろうなあ、と思います。
それでも、民法の考え方を知っておくだけでも「効く」ことはあると思います。
「自分は、その気になったらいつでも姻族関係を終了させることが出来る立場なのだ」ということを知っておくことが「お守り」、「おまじない」になるかも、と考えたりします。
・・・ここまで書いて来て、「死後離婚」という言葉が流通?する背景が少しわかったような気がします。
現在の民法には「家」という概念はありません。
でも、今でも、やっぱり「結婚」には「相手の家へ入る」という意味合いが付きまとっているのでしょうねえ。
だから、姻族関係終了の手続きが、「配偶者の死後に婚家を出る=死後離婚」というイメージで語られるのでしょう。
今日は民法728条2項のお話でした。
へえ~、と思っていただけましたら幸いです。
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