こんにちは。司法書士の片岡和子です。
梅雨ですねえ。
ベランダのアジサイは色が変化してきました。
青と緑の混じりになってるでしょ。
もともとは青一色だったのが、だんだん緑になって来るのです。
いずれ緑一色になるのです。
この変化が楽しくて目が離せない毎日です♪
さて、今日は民法のお話です。
素材は民法13条第1項10号。
まずは条文を。
【民法第13条】①保佐人が次に掲げる行為を・・・以下省略
1~9 省略
10 全各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
省略ばかりで、何のこっちゃ? ですよね。
いいのです、それで。
お見せしたかったのは「制限行為能力者」の定義の部分だけですので。
制限行為能力者というのは「行為能力が制限されている人」のこと。
じゃあ「行為能力」とは何か、というと「法律行為を単独で行うことができる法律上の資格」のことです。
例えば未成年者。
未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意を得なければなりません(例外はあります)。
わかりやすい例では「携帯電話の契約には親の同意が必要」というやつ。
単独で契約をすることができない、つまり「行為能力が制限されている」という状態なのです。
制限行為能力者として「未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人」と列挙されることが多いです。
未成年者はいずれ成年になって制限行為能力者ではなくなります。
それに対して成年被後見人や被保佐人の場合、行為能力の制限が必要な状態が継続することを想定しています。
そして、判断能力に応じて成年被後見人→被保佐人→被補助人の順に制限が緩くなっている、という説明がなされることが多いです。
この説明はとてもわかりやすく、初学者には理解しやすいと思います。
でも実は正確ではないのです。
ここで改めて民法13条第1項10号を読んでみましょう。
制限行為能力者の定義を「未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人」としていますね。
注目点はもちろん被補助人の部分です。
単なる「被補助人」ではなく「第17条第1項の審判を受けた被補助人」としています。
つまり、「第17条第1項の審判を受けていない被補助人は制限能力者ではない」ということなのです。
これは条文を読んでみるしかないですね。
頑張ってお付き合いください。
【民法第17条】①家庭裁判所は・・・中略・・・被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし・・・以下省略。
「特定の法律行為をするには同意を得なければならない」とすることが「できる」と書いてあります。
つまり、「同意が必要」という審判を「しなくてもよい」ということなのです。
同意が必要な場面がない、ということは「行為能力が制限されない」ということですよね。
すなわち「制限行為能力者ではない被補助人」も存在する、ということ。
違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。
「判断能力に問題がある方を守るのが後見・保佐・補助の制度でしょ? そのための行為能力の制限じゃないの?」と。
実は、「補助」の類型の場合には、行為能力を制限せずに本人を援助する方法があるのです。
補助人に「同意権」は与えずに「代理権」のみを与える、というやり方です。
(条文を挙げるのはやめておきましょう。もうウンザリ、かもしれませんので。)
その場合、「被補助人は自分自身で法律行為を行うことができるけれど、補助人に代理で行ってもらうこともできる」という状態になります。
ここからが今日の深読みポイントです。
この「補助人に代理権のみを与える」というやり方は使える、もっと使われてもいい!! と私は考えているのです。
「少し判断能力に不安があるので誰かにサポートして欲しい」という場合に、家庭裁判所にお願いをして補助人をつけてもらう。
サポートして欲しい内容が「通帳を預かって、必要な時にお金をおろしてきて欲しい」であれば、預貯金についての金融機関との取引に関する代理権をつけてもらえばいい。
老人ホームに入りたいけれど手続きが不安、というのであれば施設への入所契約の代理権をつけてもらえばいい。
いろいろとカスタマイズできるのです。
しかも、繰り返しになりますが、ご本人は「制限行為能力者」にはなりません。
いかがでしょう。
使えるかも? と思われたのではないでしょうか。
実際には、こういう例は少ないのかもしれないです。
こういう使い方ができる、という認識は広まっていないと思いますし。
私自身、こういう形で補助人として関わった案件はこれまでに1件だけです。
もったいないなあ、と思っているのです。。。
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