相続人のうちの一人を受取人とした生命保険と遺産分割

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こんにちは。司法書士の片岡和子です。

東急大井町線の尾山台と九品仏の中間地点あたりで開業してます。

 

以前、相続に関して、こんなご相談を受けたことがありました。

「父が亡くなりました。

相続人は兄と私の二人です。

遺産分割の話し合いをしているのですが、兄は、自分が受取人になっている生命保険は自分のものだと主張して譲りません。

私は、父が掛けていた生命保険は父の遺産に含まれると思います。

法律的にはどうなんでしょうか。」

 

結論から言うと、この生命保険金はお兄さんの固有財産であり、遺産には含まれません。

ですから、遺産分割の話し合いの対象にはなりません。

生命保険金は受取人、この場合はお兄さんのものになります。

この結論には、違和感を感じられる方も多いのではないかと思います。

その違和感の基にあるのは、

「もともと亡くなった人のお金から出ているものなのに・・・」

という感覚なのだと思います。

これについては、

「保険を掛ける」ということは契約なので、その契約に従って生命保険金は受取人のものになるのだ、

という理解をすることになります。

それでもまだ、

「何か直感とズレてる」

「やっぱり違和感が残る」

とお感じになる方もいらっしゃるのではないかと思います。

その感覚の根底にあるのは「不公平感」なのではないでしょうか。

この相談例でいうと、

お兄さんだけが生命保険金を受け取って得をしている、

その得をした分を、何らかの形で遺産分割に反映させるべきなのではないか、

ということなのだと思います。

これについては、生命保険が「特別受益」にあたるのかどうか、という問題として考えることができます。

「特別受益」については民法903条に規定があって、ごくごく大ざっぱに言ってしまうと、

「特別受益に当たる贈与などがあった場合には、相続に際して調整が行われ、贈与等を受けた相続人は遺産の取り分が少なくなる」

という制度です。

生命保険金を受け取る、ってことは、まさにこの「特別受益に当たる贈与など」に該当しそうな気がしますよね。

だとすれば、生命保険金をもらった人は遺産の取り分が少なくなるはず、ということになりそうです。

ところが、裁判所は

「生命保険金は、原則として特別受益とならない」

と言っています。

生命保険金をもらった人の遺産の取り分は少なくならないのが原則、ということです。

ただし、裁判所は、例外があるとも言っています。

「あまりにも不公平な場合」には特別受益に準じて考える、というのです。

そこで、「あまりにも不公平」とは、具体的にどれぐらいのことを言うかというと、

「遺産が8000万円で、生命保険金が5000万円」

などの場合だそうです。

ちなみに、

「遺産が6000万円で、生命保険金が500万円」

という場合には「あまりにも不公平」とはいえない、とのこと。

結局のところ、個々のケースに応じて判断されることになりますが、この数字で何となくイメージはつかめるのではないでしょうか。

 

ここで、冒頭にの相談例への回答ですが、

「お兄さんが受取人になっている生命保険はお兄さんのもので、遺産には含まれません。

また、遺産分割に際しては、生命保険について考慮しないのが原則です。

ただし、遺産の総額や生命保険の金額などを考えるとあまりにも不公平な場合には、それを考慮した割合で遺産分割をすることもあります。」

ということになります。

ただ、これは一般論ですので、具体的な事案については直接専門家にご相談くださいね。

 

 

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2014年8月26日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka