こんにちは。司法書士の片岡和子です。
街にはキンモクセイの香りが充満してますね。
またこの季節が巡ってきたんだなあ・・・。
さて。
前回は養子縁組について書きました。
→「養子縁組の届出は役場へ。許可は家庭裁判所で。」はこちら。
その中で
「未成年者を養子にするには原則として家庭裁判所の許可が必要」
ということをお話しました。
「原則として」というからには「例外」があるわけで。
民法798条を見てみましょう。
第798条(未成年者を養子とする縁組)
未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。
「チョッケイヒゾク」とは何ぞや、ということには深入りしないでおきましょう。
典型的な場合として
「孫を養子にする場合は家庭裁判所の許可が不要。」
ということです。
何となくわかりますよね。
未成年者の福祉に反する可能性の低い場合には、養子縁組の可否について審査をする必要はないだろう、という考え方です。
ということは・・・
未成年者の福祉に反する可能性のある場合には、孫を養子にする際にも許可が必要になるということです。
今度は民法794条を見てみましょう。
第794条(後見人が被後見人を養子とする縁組)
後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
・・・以下省略。
孫を養子にしたい場合であっても、祖父や祖母が孫の後見人となっている場合には許可が必要、ということ。
なぜか?
もちろん、法律にそう書いてあるから、なのですが、そこにはやっぱり、もっと実質的な理由があるのです。
ここは、理屈っぽく説明するよりも、事例で示してみましょう。(架空の事例ですが。)
未成年者Aの両親は事故で死亡した。
Aは多額の遺産を相続した。
Aの祖父BはAの未成年後見人に就任し、Aの財産を管理していたが、自分の借金の返済のためにAの財産を使い込んだ。
家庭裁判所への定期報告の時期が迫り、Bは自分の横領の事実を隠ぺいするため、Aと養子縁組をすることを思いついた。
いかがでしょうか?
未成年後見人は、家庭裁判所の監督を受ける立場です。
定期的に報告をしなければなりませんし、必要と思われる場合には、裁判所はいつでも調査をすることができます。
これを逃れるためには養子縁組をして「親権者」になってしまえばよい、
そうすれば家庭裁判所から監督を受けることもなくなる、
とBは考えたのですね。
そうは問屋がおろさない、ということです。
この事例では、もちろん養子縁組の許可は下りないでしょうし、Bは後見人を解任されるかもしれませんね。
こんな具合に、民法は未成年者を守るための条文をあちこちに置いています。
未成年後見と養子縁組に関しては、他にもいろいろと問題が生じてくることがあります。
これについては、また機会がありましたら、お話することにしましょう。
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