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今日は成年後見のお話です。
ある人に成年後見制度の利用が必要になり、成年後見の申立てをすると後見人が複数選任される場合があります。
複数の後見人が選任される理由は様々ですが、たとえば次のような場合が考えられます。
Aさんは認知症で介護の必要がある状態で、在宅で暮らしている。
娘のBさんが同居してAさんの身の回りの面倒をみている。
Bさんは成年後見制度の利用を考え、申立てをしたが、Aさんの財産は多岐にわたり、管理は複雑になりそうである。
Bさんは、Aさんの身上面(介護サービスの利用の選択など)については、自分が適切に判断していく自信があるが、財産管理については不安を感じており、自信がない。
できれば、財産管理面については別の人に任せたいと考えている。
こんな場合に複数の成年後見人が選任されることがあるのです。
そして、このようなケースでは、司法書士などの専門職(この場合はCとします)が、もう一人の後見人として選任され、「事務の分掌の定め」が置かれます。
成年後見開始の審判書には
・本人の成年後見人として申立人B及びCを選任する。
・成年後見人らは、別紙事務分掌目録記載のとおり事務を分掌しその権限を行使しなければならない。
といったことが書かれることになります。
この「別紙」の「事務分掌目録」には
1 成年後見人Bは、本人の身上監護の事務を分掌する。
2 成年後見人Cは、本人の財産管理の事務を分掌する。
という記載がなされることになります。
つまり、Aさんの娘さんのBさんが介護サービスの契約などを担当し、専門職CがAさんの財産管理を担当することになります。
銀行への成年後見の届出などはCが行うことになるわけですね。
ところで、このケースで、Aさんの療養費を捻出するためにAさんが所有する賃貸アパートを売却することになったとしましょう。
これは成年後見人BとC、どちらの職務になるでしょうか?
これは、Cの職務になります。
もちろん、アパートの売却の必要性などについては、BとCとで、しっかり話し合うことになるのですが、実際の不動産取引では、Cがサインをして、Cのハンコを押すことになります。
もしもBさんが契約書に「A成年後見人B」とサインをしてハンコを押したとしても、「不動産の売買」は「身上監護」であるとは言えませんから、Bさんは、権限外の行為をしてしまった、ということになります。
ですから、成年後見人と取引をする相手方は気をつけなければなりません。
「成年後見人と取引をする際は、成年後見の登記事項証明書の確認を!」
というのは、かなり浸透してきていると思うのですが、
「成年後見人が複数いて、事務の分掌の定めがある場合がある。」
というのは、ご存じない方もおられると思います。
複数の後見人がいること、事務分掌の定めがあること、さらに、その事務分掌の内容は、登記事項証明書をよーく見ると、ちゃんと記載されています。
もしも成年後見人と何かの取引をすることがあったら、
「後見人が複数いるケースなのでは?」
ということも確認してみるようにしてくださいね。
【2017年11月追記】
この記事は2014年に書いたものですが、ネットでの検索に引っかかりやすいらしく、今でもよく読まれています。
そこで、少し補足をしておこうと思います。
「複数の後見人がいる」というケースは「当初から後見人が複数である」という場合だけではありません。
途中から後見人が追加選任されることもあります。
例えば、親族が後見人になっているケースで、その親族後見人が体調を崩してしまい、一時的にサポートが必要になった場合などが考えられます。
専門職が追加で後見人に選任されるけれど、特に権限分掌の定めは置かれない、という形態になることが考えられます。
この場合、複数の後見人のどちらもが、特に制限なく後見人として活動できる、ということになります。
別のパターンもあります。
当初、親族が単独で後見人になっていたけれど、どうも財産管理がきちんとなされていない、といった場合です。
裁判所としては、そのまま放置するわけにはいきませんから、職権で専門職を追加選任する、といった対応が取られます。
同時に、親族の権限に制限を加えて、財産管理を行えるのは専門職後見人のみとする、という形態になることもあるのです。
他にもいろいろなパターンが考えられます。
どのような形態になるにせよ、登記事項証明書を見れば、それぞれの後見人の権限の内容を確認することができます。
あまり古い登記事項証明書だと、新たに設けられた制限が確認できない場合もあり得ますから、後見人と重要な契約をする場合には、新しい登記事項証明書の提示を求めることも必要かな、と思います。
以上、参考になさってください。
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★成年後見制度の利用を完全に確実に回避する方法は・・・ない。