こんにちは。司法書士の片岡和子です。
東急大井町線の尾山台と九品仏の中間地点あたりで開業してます。
今日は、相続のお話です。
こんな場合を考えてみましょう。
お父さんが亡くなりました。
相続人はお母さんとお兄さんとあなた。
遺産は自宅とマンションが二部屋。
マンションはどちらも貸していて、Aマンションの賃料収入は月に20万円、Bマンションの賃料収入は月に10万円。
ある日、お兄さんが「相続の話し合いをしよう」と言います。
お兄さんが言うには、「親父は手書きの遺言を残していた。そこには、自宅はおふくろ、Aマンションは俺、Bマンションはお前に相続させる、と書いてあった。だから、そのとおりに分けよう。遺言なんだから。」とのこと。
あなたは「本当に遺言はあったの? あったのだったら見せて。」と言うと、お兄さんは、「いや、見せる義務はない。親父が俺を信用して預けたんだから。」
あなたは、「本当に遺言があって内容がそのとおりだとしたら、それに従うつもりだけど、もしもお兄さんが嘘を言っているのだったら、それに従うつもりはない」と考えています。
さて、どうすればいいのでしょう?
こんな場合、あなたはお兄さんに「遺言書は家庭裁判所に提出して検認を受けなけらばならない、と法律で決まっているのだから、その手続きをして。」と言えばよいのです。
もしも「遺言がある」がウソであったとしたら、もちろんお兄さんは「検認」の手続きをすることなどできません。
もしも遺言が本当に存在をしていたとしても、「検認」を受けていなければ、その遺言書を使って自宅やマンションの名義変更をすることはできません。
ですから、あなたは「とにかく検認手続を」と主張すればよいのです。
お兄さんが仕方なく検認の手続きを家庭裁判所に申し立てたとしたら、家庭裁判所からあなたやお母さんに「○月○日○時に検認をしますからおいでください。」と連絡があります。
あなたは、その日に家庭裁判所へ出向けばよいのです。
封をしてある遺言書ならば、出席者全員の目の前で開封されます。
そして、内容を確認することができます。
もしも当日家庭裁判所へ出向くことができなくても、後日、「検認調書謄本」をもらえば、内容が確認できます。
こんな具合に、「手書きの遺言」であっても、相続人全員がその内容を知ることができる仕組みになっているのです。
ですから、今日の例のような場合には、安易に話し合いに応じるのではなく、まずは検認の手続きを通じて遺言の内容を確認して、納得がいったならば、お父さんの望む通りの内容を実現していけばよい、ということになります。
【2020年7月11日追記】
この記事は2015年に書いたものです。
遺言の制度は、当時と現在とで異なる点がありますのでご注意下さい。
記事の内容は参考になると思いますので、そのまま残します。
公正証書遺言の場合については、別の記事で書いてありますので参考になさってください → こちら
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