民事信託と後見制度は排斥し合うものではない

こんにちは。司法書士の片岡和子です。

 

「民事信託」が注目を集めているようです。

たまに私のところにも問い合わせがあります。

「信託と後見、どちらがいいんでしょうか?」

「認知症になって後見人がつけられてしまうと財産が自由にならないそうですね。なので、信託について検討したいのですが。」

といった内容です。

これらの質問を聞いていると、「そもそもの根本的なところを理解しないまま『民事信託がいいらしい』という情報が一人歩きしているのでは?」という気がして、ちょっと心配になってしまいます。

そこで今日は「基本のき」を、少しだけお話しましょう。

 

まず「信託」とは何なのか。

これについては「信託法」を見てみましょう。

 

【信託法第二条第1項】

この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的・・・中略・・・に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。

 

難しいですよね?

ごくごく簡単に言ってしまうと、「信託法に定められた方法により、一定の目的のために特定の者に財産の管理などをやってもらう。」ということです。

例を挙げてみましょう。

「アパートを一棟持っていて、その賃料収入で暮らしている。年を取ってきてアパートの管理が負担なので息子に任せたい。アパートの所有権は息子に移転させるけれど、賃料はこれまでどおり自分の生活費に充てたい。なのできちんと管理をして、賃料は自分に送金して欲しい。自分が死んだら、アパートは完全に息子のものにしたい。」といった場合に、息子との間で「信託契約」をして、細々と取り決めをしておくのです。

息子を信頼して託す、という契約です。

信じて託すから「信託」です。

商売として、利益を生むために行うものではないので「民事信託」と呼びます。

家族が、家族のために行うことが多く、「家族信託」とも呼ばれます。

 

さて、父と息子が信託契約をしたとしましょう。

その後、父がさらに高齢になり認知症になったとしても、契約の効力は失われません。

息子は、それまでどおり、託された財産の管理を続けていくことになります。

この局面を切り取ってみると、「認知症になってしまったけれど成年後見制度を使わずに財産管理ができている」という状況になります。

そこに注目すると「民事信託を使えば、悪評だらけの成年後見制度を回避できる!」と言えそうですが・・・

実は、そういう訳にはいかない場面もあるのです。

父の配偶者が亡くなったとしましょう。

認知症が進んでしまっていれば、父は自ら遺産分割協議をすることはできません。

相続の手続きを進めるためには、結局のところ後見人が必要になってしまうのです。

この場面では信託は全く役に立ちません。

だからといって、「信託がダメ」ということではありません。

「役に立つ場面・局面が異なる」ということなのです。

民事信託と後見制度は、互いに排斥し合うものではないのです。

 

法定後見制度については、「全く知りもしない他人が成年後見人に選任されてしまうことがあるらしい」ということが、ほとんど「恐怖」のようなものとして語られることも多いようです。

それを回避したければ、「任意後見」の制度を利用すればよいのです。

後見人になってもらいたい人と、あらかじめ契約をしておくのです。

自分が認知症になった時に後見人になってもらいたい人って、よっぽど信頼できる人ですよね。

それって、「信託契約をして財産を託す相手」と、ほぼイコールなのではないでしょうか。

だとしたら、民事信託と任意後見は「排斥し合う」どころか「補い合う」関係だと言えそうですね。

「民事信託と任意後見の併用」という選択も大いにありそうです。

 

いかがでしょうか。

なるほど、と思っていただけましたら幸いです。

 

 

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2019年6月28日 | カテゴリー : 成年後見 | 投稿者 : Kazuko Kataoka