特別代理人の選任が必要な場合 ~遺産分割~

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こんにちは。世田谷区等々力の司法書士です。

 

今日は、後見人と被後見人が遺産分割協議をすることになった場合についてのお話です。

事案に沿ってご説明しましょう。

 

[事案]

AとBは夫婦である。

AB間には娘Cがいる。

Bは高齢になり認知症を発症し、預金の管理等ができなくなったため、成年後見制度を利用することとし、Cが成年後見人に就任した。

その後、Aが死亡した。

遺言書はなかった。

Aの遺産は、銀行預金と株式である。

Cが調べたところ、預金口座は複数あり、株式も複数の銘柄を持っていた。

Cは、Aの遺産を、Bと自分とできちんと分割し、

Bのものと自分のものを明確に分けて管理する必要があると考えた。

 

Cさん、えらいですね~。

理想的な後見人です。

それで、この先、Cさんが何をしなければならないかというと、遺産分割協議です。

つまり、遺産分割の話し合いです。

この場合、誰と誰が話し合うのでしょう?

そう、BさんとCさんですよね。

でも、Bさんは認知症で、成年後見制度を利用しています。

(この場合のBさんを「被後見人」といいます。)

なので、BさんのかわりにCさんが後見人として遺産分割協議をする・・・

あれ? 何だか変なことになりますよね。

CさんとCさんが話し合う、ということになりますよね。

すると、遺産分割の内容は、Cさんがひとりで自由に決めてよい、なんてことになってしまいます。

これではBさんの利益が損なわれてしまいます。

(Cさんはマジメでいい人なのかもしれませんが、形式的にみると、Bさんの利益を損なう可能性がある、といえますよね。)

そこで、今回の遺産分割に関しては、Cさん以外の人に、Bさんの代理人になってもらい、(これを「特別代理人」といいます。)その特別代理人とCさんとの間で遺産分割協議をすることになるのです。

では、特別代理人は誰が選ぶのかというと、家庭裁判所です。

でも、家庭裁判所が勝手に特別代理人を選んでくれるわけではありません。

そこで、Cさんは家庭裁判所に対して「特別代理人の選任の申立て」をしなくてはなりません。

次に、特別代理人として誰を選ぶのかというと、Cさんは、自分で候補者を探すことになります。

弁護士さんや司法書士のような専門家である必要はありません。

Bさんと利害の対立しない人ならば、だれでもよいのです。

それよりも一番大切なのは、特別代理人選任申立の際に、「遺産分割協議書の案」を提出しなければならないことです。

どんな遺産分割をするのかを、家庭裁判所に示さなければならないのです。

そして、その内容は被後見人(この事案ではB)の不利益とならないものでなければなりません。

具体的には、Bに法定相続分(この事案では2分の1)が確保されたものでなくてはなりません。

家庭裁判所は「誰を選任するか」よりも、「公正な遺産分割が行われるか」を見るのです。

さて、実際の申立てにあたっては、他にも特別代理人候補者の住民票などが必要になります。

東京家庭裁判所の場合は、ホームページに説明がありますし、申立書のダウンロードもできます。

ご自分でも申立書の作成は可能ですが、もしも、わからないことがあったり、面倒だったりした場合には、お気軽にご相談においでくださいね。

 

【2018年5月29日追記】

この記事は、後見監督人が選任されていないケースについて解説したものです。

後見監督人がいる場合には、これとは異なった手続となります。

具体的には監督人に相談の上、監督人の指示に従って進めるようにしてください。

 

【2019年2月22日追記】

特別代理人として誰を選任するかは、最終的には家庭裁判所の判断によります。

候補者が必ず選任される、とは限りません。

第三者の専門職が選任される場合もあります。

この点をよくご理解の上、申立てをなさってください。

 

【2019年8月21日追記】

遺産分割協議のために特別代理人選任を申立てたところ、なぜか「後見監督人」が選任され、親族後見人の方が戸惑ってしまうケースがあるようです。

このような展開になる理由はいろいろとありますが、典型的なのは「遺産分割後に被後見人の財産が大幅に増えることになる」というケースだと思います。

被後見人の財産が増え、財産管理の責任が増大することが見込まれる場合には、遺産分割前から監督人をつけてしまおう、という発想です。

後見監督人がついている場合には、監督人が被後見人を代理して遺産分割協議を行うことになります。

特別代理人の必要がなくなるのです。

遺産分割後、親族後見人は、増えた財産の管理を監督人の監督下で行っていくことになります。

「ということは、遺産分割で財産が増えたら、ずっと監督人をつけられたままなのか?」というと、必ずしもそうではありません。

後見制度支援信託や後見制度支援預貯金の制度などを利用して、親族後見人が手元で管理する財産が少なくなれば、「監督の必要なし」ということになって監督人は辞任する、という展開になることもあります。

後見監督人がついた後、どのような展開になるのかは、個々の事案に応じて異なってきます。

実際に後見監督人が選任された場合には、その監督人の指示に従って後見事務を進めていくようにしてください。

 

 

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2014年4月10日 | カテゴリー : 成年後見 | 投稿者 : Kazuko Kataoka