遺留分を侵害する遺言は「無効」ではない

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今日は遺言・相続についてのお話。

まずは事案をごらんください。

 

[事案]

Aが亡くなった。

遺産は自宅と銀行預金である。

Aの相続人は長男Bと二男Cである。

Cは遺産分割の話し合いをBに申し入れたが、Bの返答は

「父は遺言を残していた。全財産を自分がもらうことになっている。話し合いの必要はない。」

とのことだった。そして

「全財産をBに相続させる」

と記された遺言書をCに見せた。

驚いたCが法学部出身の友人に相談したところ

「君には4分の1の『遺留分』がある。遺産の4分の1は君のものだから、その遺言どおりに全部がお兄さんのものになることはないよ。」

と言われて少し安心した。

遺産の半分は無理でも、4分の1だけでも貰えるならよかった、と思った。

 

さて、この事案、いかがでしょうか?

法学部出身の友人の言うことは正しいでしょうか?

Cさんはこれを鵜呑みにして大丈夫でしょうか?

実は、Cさんはこの友人の言うことを全部鵜呑みにしてはいけません。

「遺留分」という制度があること、この場合のCさんの遺留分が4分の1であることは、そのとおりです。

でも、

「その遺言どおり全部がお兄さんのものになることはないよ」

という部分が誤ってます。

「Cさんには4分の1の遺留分がある」

というのは

「お父さんの遺言のうち4分の1が無効になる」

ということではないのです。

お父さんの「全財産をBに相続させる」という遺言は有効です。

この遺言が、きちんと作成されたものであるならば、お兄さんのBさんは、この遺言書を添付して法務局へ申請することによって自宅をBさん名義に変更することができます。

また、この遺言書を銀行に提示することによって銀行預金を全額払い戻すこともできるのです。

ですから、Cさんは何もしないで待っていても、遺産の4分の1を受け取ることはできません。

放っておけば、すべてがそのままお兄さんのBさんのものになってしまうのです。

そこで、Cさんはどうすればよいのかというと、自らアクションを起こさなければなりません。

Bさんに対して「遺留分減殺請求」をしなければならないのです。

じゃあ、その遺留分減殺請求は具体的にはどうやってするの?

遺留分減殺請求をするとどうなるの?

自動的に遺産の4分の1が戻ってくるわけじゃないよね?

話し合いをすることになるの?

裁判か何かしなくちゃいけなくなるの?

いろいろと疑問は尽きないと思うのですが、結論を言ってしまうと、

速やかに専門家に相談して対応すべき、

自己流で進めない方がよい、

ということです。

遺留分減殺請求には期限が定められていますし、遺留分減殺請求をした後の法律関係も複雑になることが多いからです。

せひ、お近くの弁護士さんに相談なさってみてください。

 

【2020年10月24日追記】

民法が改正されて、「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」に変わりました。

でも、基本の考え方は変わっていませんので、この記事はそのまま残してあります。

どうぞ参考になさってください。

 

 

☆こちらの記事も読んでみてね☆

★遺留分侵害額請求か遺留分減殺請求か? 相続開始日によって異なります。

★スムーズな相続のために② まずは故人の意思(遺言)の確認を。

★スムーズな相続のために⑩ 遺言の内容に納得できない場合

★遺言は万能ではない。⑤遺言と異なる内容の遺産分割

 

 

2014年10月7日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka