こんにちは。司法書士の片岡和子です。
写真はもちろん私の名刺。
シンプルでしょ。
2019年の年末に新しくして、それ以来ずっと使ってるデザインです。
文字が小さめなのですよねえ。
ご高齢の方には見にくいかも。
ケアマネさんなど、介護・福祉関係の方々の名刺はもっと文字が大きくて、ふりがなが入ってるものも多いですよね。
見習った方がいいのかな、と思いながらも変える気にはなれなくて。
お気に入りなのです。
で、今日はAさんと私の名刺のお話。
Aさんは認知症で、保佐開始の審判を受けておられます。
ご自宅で一人暮らしをされています。
私がAさんの保佐人です。
でも、Aさんは私のことを覚えておられません。
お会いした時はいつも、自己紹介から始めます。
「この間の続き」はできないのです。
これは仕方のないことなので、この状況を受け入れて進めて行くしかありません。
その都度、「コイツは信頼できる、自分の味方だ」と感じていただけるような接し方を工夫します。
そんなある日、電話がかかって来たのです、Aさんから!
え、Aさん電話できるんだ、他ならぬこの私に電話くださった!
・・・と嬉しくなってしまった私。
話の内容は「督促状が来てる! どうしたらいいの? 助けて!」というものでした。
その日は動けなかったので、次の日にAさんを訪問したのですが・・・
Aさんは私の顔を見て「どちらさま?」と。
で、結局その日も自己紹介からスタートしたのでした。
話をしながら電話のあたりを観察すると、古い名刺がたくさんありました。
証券会社の方とか、不動産会社の方とかの。
その中に私のものもあったのです。
「Aさん、昨日私に電話くださったんですよ。これが私の名刺。督促状で困ってるって。」
と振ってみると、記憶がよみがえったご様子でした。
「そう、そうなの。誰に相談していいかわからなかったの。名刺をいろいろと見ていたら司法書士さんの名刺があったから電話してみたのよ。たぶんこういう問題は司法書士さんだろうと思って。」
Aさん、ナイスです。
その思考過程は正しいです。
名刺と実際の人物が結びつかない中で、結果的に一番の味方に繋がったのですから。
問題の「督促状」は私が預かって帰り、すぐに対応。
電話の回りの名刺たちは、そ~っと脇へよけて、私の名刺だけを電話の近くへ置いておきました。
そしたら、時々電話がかかってくるようになりました。
最近の心配事は「一人でいるのはよくないと思うの。老人ホームへ入りたいのよ。」ということ。
私が「今いろいろと探してるところ。もうちょっと待っててくださいね。」と言うと安心されて電話を切る。
で、翌日にはまたかかってくる、という感じです。
それがある時、電話がかかってこなくなったのです。
デイサービスには通っておられますから、ご無事であることはわかってます。
でも気になるので、時間を作って訪問してみると・・・
私の名刺は見当たらず、電話の回りにはまた、たくさんの古い名刺が並べられていました。
あ、失くしちゃったんだな・・・。
そこで「前にも名刺お渡ししたことあるんだけど、また差し上げますね。」と名刺を差し出したら
「あ、この名刺は見覚えがあるわ。え~と、カタオカカズコさんね。よろしくね。」とのこと。
あらま、私の顔も名前も覚えておられないのに、名刺は印象に残ってたのかあ。。。
私はちょっと思いついて、名刺の裏に
「Aさんの保佐人(ほさにん)です。老人ホームへ入るお手伝いをします。」
と書いておきました。
Aさんはとても喜ばれて、「そう、あなたが手伝ってくださるのね」。
そして名刺を大切そうに箱の中へ・・・。
あ~、箱にしまっちゃったら、また失くしちゃうよ~、と思う私。
でも仕方ありません。
また来て、またお渡しすればいいや、と思いつつ帰りました。
そしたら、その数日後、Aさんから着信あり。
「えっとね、名刺を見て電話してるの。『Aさんのほさにんです、老人ホームに入るお手伝いをします』と書いてあったから。」
「うんうん、今いろいろと考えてるところ。今度資料を持って行くので、相談しましょうね」
「よかった、お願いね。」
と安心されたご様子で、明るいお声でした。
・・・こんな感じで、ゆる~く繋がってるAさんと私です。
シンプルで何の変哲もない名刺が働いてくれてます♪
【この記事の内容は事実そのままではなく、アレンジを加えてあります。個人が特定できないようにするためです。どうぞご了承ください。】
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