【遺言書保管制度】①検認は不要だけど「戸籍集め」はやっぱり必要。

あけましておめでとうございます。

司法書士の片岡和子です。

実は昨日60歳になりまして。

還暦でございます。

私、もう60年も生きてるのでございます。

何というか・・・感慨深いものでございます。

数年前まではよく「私、半世紀以上生きてますから~」というフレーズを使ってました。

もちろん「人生経験豊富」を前面に出したい場面で。

でもこれからは「私、還暦ですから~」ですねぇ。。。

 

さて、今年最初の話題は「遺言書保管制度」です。

自筆の遺言書を法務局で保管してもらう、という仕組みです。

この制度、どうなの?

使えるの?

使いにくいの?

気になってる方も多いと思います。

実際のところはどうなんでしょう、って?

う~ん、どうなんでしょ。

人にもよるし場合にもよる、としか言いようがないです。

何がメリットになり何がデメリットになるかは、人にもよるし場合にもよりますから。

でも、何らかのヒントは必要になると思いますので、少しずつ書いていこうと思います。

今日は「検認不要」の点について。

遺言書保管制度のメリットとして、よく挙げられているのが「家庭裁判所での検認が不要ですよ」という点。

これ、すごく魅力的に聞こえると思います。

実際、検認の手続きは面倒です。

必要な書類を集めて、申立書を作成して提出し、期日には家庭裁判所へ出向いて・・・。

考えただけで気が重くなりそうですね。

遺言のご相談があった時に私がよくお話しするのは

「公正証書遺言は作成するハードルは高いけれど、残された相続人の方々の手続負担は少ないです。自筆証書遺言は作成のハードルは低いけれど、相続人の方々の手続負担は大きいです。自筆証書遺言は検認が必要ですので。」

ということ。

遺言書保管制度は、まさにこの点をラクにするもの、それが大きなメリットである、と言われているようです。

ホントにそうなのか、少し考えてみましょう。

検認の手続きは

①必要書類を集める

②申立書を作成して提出する

③期日に家庭裁判所へ出向く

という流れになります。

どの部分を面倒だと感じるか・・・人によって違うと思います。

得手不得手がありますから。

「申立書などの書類作成は苦にならないけど、裁判所へ行くなんて考えただけでも怖い、緊張する、嫌だ!」という方もいらっしゃるでしょう。

逆に、「裁判所? 行けばいいんでしょ。でも書類書くのは死ぬほど苦手!」という方もおられるかも。

でも・・・実はどちらのタイプの方でも苦労しがちなのが、①の「必要書類を集める」なのです。

「必要書類」のメインは「戸籍」です。

遺言をされた方の出生から死亡までの全ての戸籍、相続人全員の現在の戸籍が必要になります。

これを負担に感じる方がとても多いのです。

「相続人が配偶者と子」といった場合にはそれほどではないのですが、「相続人が配偶者と兄弟姉妹」といった場合には大変になることが多いです。

で、遺言書保管制度を利用すると、この負担がなくなるのかというと・・・実はそうではありません。

保管された遺言書で相続手続き(不動産の名義変更など)をする際には、「遺言書情報証明書」を交付してもらって、これを使うことになります。

(保管してある遺言書の原本をもらえるワケではないのです。)

この証明書の交付請求の時に、やっぱり戸籍等が必要になるのです。

何でそうなるのかというと・・・

相続人のうちの一人が遺言書情報証明書の交付申請をすると、その他の相続人たちにも通知が行くことになっているからなのです。

せっかく遺言書を保管してあっても、その事実を相続人たちに知ってもらわないと意味がない、だから全員に知らせてあげなくちゃ、という考え方なのです。

で、全員に知らせるためにはそのための情報が必要になるワケで、それは結局のところ「戸籍」になるのです。

加えて、相続人全員の「住所を証明する書類」も必要になります。

(住所がわからないと通知が送れませんから。)

保管された遺言書を閲覧するだけならば戸籍等は必要ないのですが、実際に銀行や不動産の手続きをする際には遺言書情報証明書が必要になりますので、結局のところ戸籍等が必要になるのです。

(通知を出すのが目的ですから、通知を受け取った相続人が遺言書情報証明書の交付請求をする際には、もちろん戸籍等は必要ありません。)

いかがでしょう。

確かに、遺言書検認手続きのうち③の「家庭裁判所へ出向く」が不要になる点では相続人の負担はとても少なくなります。

でも、①の「必要書類を集める」という点では実は変わらないのです。

「検認が不要になる!」という言葉に過剰に期待してしまってはいけない、ということですね。

参考になりましたら幸いです。

 

 

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2021年1月4日 | カテゴリー : 相続・遺言 | 投稿者 : Kazuko Kataoka