超入門⑨ 親のお金を横領したら刑務所行きなの?

こんにちは。司法書士の片岡和子です。

いやいや寒いですねえ。

私は最強の装備で事務所へやって来ました。

黒のダウンに濃いチャコールグレー(ほぼ黒)のウールコートを重ねて、黒のニット帽、黒のファーマフラー、黒の手袋・・・冬のカラスだ。。。

到着したら何はともあれ、暖房のスイッチ。

狭い空間なので、すぐに暖まります。

今日は、この暖かくて居心地のいい空間でブログ記事を一本書いたら夕方まで雑用をやっつける予定。

あ、冒頭の写真はヒヤシンスです。

しっかりと寒さに当たって、よい花が咲きますように。

成長が楽しみです。

 

さて。

今日の話題は「横領」です。

この記事は「超入門」ですから、横領の正確な定義などは省略します。

「預かっている他人のモノを勝手にいただいちゃうこと」ぐらいに思って読んでください。

親のおカネを預かることって、ありますよね。

私たち世代で多いのは、高齢の親が入院してしまい、入院費の支払いやら何やらでお金を預かるケース。

で、預かったお金をこっそり自分のポケットに入れてしまい、それが他のきょうだいにバレた・・・

「横領だ~、警察呼ぶぞ!」という騒ぎになったりします。

で、実際に警察が出動することがあるかというと・・・ありません。

「家庭内のことは自分たちで解決してね」ということなのですが、それだけでは法律のお話としては少々物足りませんよね。

そこで、ちょっとだけ条文にお付き合いください。

刑法の条文です。

 

【親族間の犯罪に関する特例】

第244条① 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。

 

「235条の罪」というのは窃盗罪のこと。

「235条の2の罪」というのは不動産侵奪罪のこと。

親子は「直系血族」に当たります。

つまり、「親のモノを盗んだり、親の不動産を奪ったりしても刑は免除される」ということなのです。

この条文は横領罪にも「準用」されています。

つまり、親のおカネを横領しても刑が免除される、ということ。

これは「罪にあたらない」という意味ではありません。

「罪にはあたるけれど、刑務所に入れられたりはしない」ということなのです。

・・・ここまで聞くと、

「悪いことかもしれないけど、警察には捕まらないし刑を受けることもないんだったら、ちょっとぐらい横領したって、どうってことないよね?」

と考える人も出てきそうです。

でも、「刑が免除される」というのは「刑法」の世界での問題です。

「民法」の世界では、親のおカネを横領すれば返す義務を負います。

「返せ」と言われて返さなければ、親が子を相手に訴訟を起こすこともできるのです。

それから、もう一つ重要なことがあります。

親の成年後見人になっている子供が横領した場合は、話が違ってきます。

単純な「横領罪」ではなくて「業務上横領罪」の対象となるのです。

こちらには刑の免除の規定はありません。

つまり「刑務所行き」もあり得るのです。

いかがでしょう。

なるほどねえ、と思っていただけましたら幸いです。

 

 

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