こんにちは。司法書士の片岡和子です。
2021年になったばかりだと思っていたら、もう1月も終わりに近いのですねえ。
とっても速くて早いです。
いろんなことが。
さて。
配偶者居住権のお話の2回目です。
前回は「配偶者居住権は『配偶者に与えられた当然の権利』ではない」というお話をしました。
遺産分割等の場面で、建物の所有権ではなく居住権を取得する、という選択肢が増えたのです。
詳しくは ↓ を読んでみてくださいね。
配偶者居住権がどのようなものか、ざっくりとご理解いただけると思います。
で、今日はこの制度の注意点について。
建物が共有である場合には、この制度は使えないことがあるのです。
配偶者居住権は「建物に居住する権利」ですから、共有の建物の上に成立させてしまってはマズいのです。
「共有」については民法249条以下に規定があります。
共有者の権利は、なかなかに強いものです。
民法249条には「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」と書いてあります。
使用する権利があるのですね。
この権利を、配偶者居住権で制限してしまうワケにはいきません。
実は、不動産の共有持分は売ってしまうことも出来るのです。
「持分を売る」というのはイメージしにくかもしれませんね。
ある不動産が「A2分の1・B2分の1」の共有だったとして、AもBも自由に持分を売ることができます。
Aが知らない間に、いつの間にか「A2分の1・C2分の1」になってた、なんてことも起きます。
共有の建物に配偶者居住権を成立させてしまうと、持分を自由に売ることも出来なくなってしまいますので、やっぱりマズいですよね。
(実際に建物の共有持分を売っちゃう人がたくさんいるかどうかは別として、です。)
でも実は、「マズくない場合」というのもあります。
共有者が配偶者自身だった場合です。
ある建物が夫婦の共有だったとして、夫が亡くなり、遺産分割協議で妻が配偶者居住権を取得。
・・・この場合、「共有者」は妻自身ですから、何の不利益もありません。
ですから、この場合には配偶者居住権は成立します。
問題になるのは、建物が「親子共有」だった場合だろうと思います。
建物が父と息子の共有で、そこに父母が住んでいる・・・よくあるパターンですよね。
で、父が亡くなって、母が配偶者居住権の取得を希望した・・・でも、これはダメなのです。
配偶者居住権を成立させることはできません。
共有者である息子の権利を害してしまうからです。
???と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
このケースでは息子も父の相続人です。
相続の当事者なんだから、息子がOKすればいいんじゃないの? と感じる方は多いのではないでしょうか。
でも「父の相続人である息子」と「建物の共有者である息子」は分けて考えなければなりません。
相続問題と共有問題は切り離して考える必要があるのです。
別問題なのです。
感覚的には飲み込みにくいと思いますが。
もちろん、この例で母が配偶者居住権を取得できないからと言って、この家に住み続けることができない、というワケではありません。
何かしら他の方法を考えればよい、ということなのです。
いかがでしょう。
なるほどね、と思っていただけましたら幸いです。
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