調停前置主義とは

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こんにちは。司法書士の片岡和子です。

東急大井町線の尾山台と九品仏の中間地点あたりで開業してます。

 

さて、今日のタイトルの「調停前置主義」って言葉、耳にしたことがありますか?

この言葉はご存じなくても、

「離婚の話し合いがうまくいかない場合、イキナリ訴訟をするのではなく、まずは家庭裁判所で離婚調停をしなくちゃいけないんだよ。」

という話をお聞きになったことはあるのではないでしょうか。

これは、離婚事件には「調停前置主義」の適用があるからなんです。

根拠は家事事件手続法の257条1項と244条にあります。

簡単に言うと、

「家庭に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。」

ということなんです。

離婚事件でなぜこのような調停前置主義が採られているかというと、それはやはり、本来訴訟よりは話し合いに馴染む紛争類型だからでしょう。

当人同士で協議が整わなかったとしても、第三者が関わることによって何かしらの解決が望めるかもしれない、それならば、家庭裁判所がその「第三者」の役割を果たしてみよう、という考え方なのだと思います。

調停前置主義とは、訴訟よりも話し合いで解決するのが望ましい案件について、まず調停をすることを法的にも義務付ける制度、ということですね。

ところで、離婚と並ぶ大きな家庭内紛争といえば、遺産分割の問題があります。

実は、法律上は遺産分割については調停前置主義の適用はないんです。

ちょっと意外な感じがするかもしれませんが、遺産分割の案件は家庭裁判所では「審判」で行われるもので、「訴訟」で決着をつけるものではないんです。

ですから、

「家庭に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければならない。」

という調停前置主義に該当しないんです。

なので、調停を申立てをせずにイキナリ審判の申立てをすることができます。

でも、第三者が関わった話し合いの場を設けるのが望ましい、という点では、離婚の案件も遺産分割の案件も、共通するものがありますよね。

そこで、家庭裁判所はどうするかというと、イキナリ審判が申立てられても、職権で調停にまわしてしまうのです。

(法律上、そういうことができることになっています。)

遺産分割の場合、法律上の調停前置主義の適用はないけれど、「事実上」調停前置主義的な考え方で運営されている、ということですね。

結局のところ、離婚も遺産分割も

「できれば調停の場で、話し合いで解決してくださいね。」

という点では同じで、家庭の事件に関する裁判所の考え方がよく現れていると思います。

 

 

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