こんにちは。世田谷区の司法書士です。
東急大井町線の尾山台と九品仏の中間地点あたりで開業してます。
賃貸住宅の敷金トラブルといえば、借家人側からの「敷金を返してもらえない」というものが典型的です。
でも、紛争には、同じ数だけの「相手方」がいるわけで、敷金トラブルの場合の相手方、「大家さん」というものが、トラブルと同じ数だけ存在するのですよね。
アパートやマンションの「大家さん」には、ビジネスとして賃貸業をやっている方もいれば、フツーの人が業者に勧められて自宅敷地内にアパートを建てて貸している、という場合もあります。
私は、「大家さん」側ともお話をする機会がありますが、どうやら共通の感覚をお持ちの方が多いように感じます。
たとえば、「賃料はまるまる儲けになる。」のが基本、という感覚。
実は、部屋のクロスが自然と劣化して変色した場合など、これの張り替え費用は基本的には大家さん持ちで、受け取った家賃の中から支出しなければならないものなんですが、これがわかっていない方がおられます。
なので、家賃を受け取っても、いずれ必要になる修繕費については深く考えずに
「収入になった!」
と単純に喜んでしまいます。
そして、賃借人が引っ越すことになって、部屋の内部を確認してみて、クロスが変色しているのを見て、
「このままじゃ次の借り手がつかない、きれいにしないと!」
ということになります。
でも、それに備えてこれまでに受け取った家賃を積み立てているわけではありませんから、単純に
「クロス張替え費用は敷金から引いておこう。借家人が住んでて汚れたんだから。」
と考えてしまうようなのです。
それに、いちどでも受け取ったものは返すのが惜しい、というのもホンネでしょう。
それで、敷金についても、「預かっている」というより、「もらったもの」という感覚になってしまうのでしょう。
そして、借りていた側も、よくわからないままに「そんなものなのかな」と思って、敷金からクロス張替え費用が引かれることを受け入れてしまいます。
これが繰り返されると、大家さんの「これがアタリマエ」という感覚は、どんどん強くなっていってしまいます。
そして、ある日、ある賃借人から「敷金返還請求」がなされて、
「クロス張替え費用は、賃貸人の負担であるはず。」
と言われると、
「なぜだ? これまでずっとこれでやってきて誰も文句を言わなかったじゃないか? 何でだ?!」
と激怒する、ということになってしまいます。
ビジネスとしてやっている大家さんの中には、このあたりのことを十分理解していて、
「敷金返還請求をされなければラッキー、されたら、その都度対応すればいい」
という考えでやっている人もいるようです。
でも、素人といっていい大家さんにとっては、
「敷金返還請求とか、とんでもないことを言ってきた借家人がいる。こんなことは初めてだ。けしからん、許せん。」
ということになってしまったりします。
でも、これは、大家さんの勘違いなのです。
「通常損耗の修繕費用は大家さんが負担する」が原則なのです。
この原則を理解してくださる大家さんが増えると、敷金に関する紛争も減るんじゃないかなあ、と思います。
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